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愛媛県スポーツ推進条例
スポーツは、心身の健全な発達や健康の保持増進に重要な役割を果たすもので、体力の涵(かん)養や運動能力の向上につながる運動競技その他の身体活動は、肉体面のみならず、精神力を鍛え、他者を思いやる心を育むなど、とりわけ青少年の健全育成に資するものである。また、適度な運動は、体力向上、生活習慣病予防、精神的充足感の獲得など、日常生活の質の向上に有効なものであり、広く全ての県民が、その能力や適性に応じて、親しむことができるようにすることが大切である。さらには、スポーツには、「する」楽しさのみならず、「見る」楽しさ、「応援する」楽しさ、「支援する」楽しさなど、様々な楽しみ方があり、スポーツを通じての人と人との交流や地域と地域との交流が生まれ、地域の一体感や活力の醸成、ひいては、その地域の活性化へとつながることが期待できるものである。
愛媛県においては、平成29年に、「君は風 いしづちを駆け 瀬戸に舞え」をスローガンに、国民体育大会が64年振りに、全国障害者スポーツ大会が初めて開催されることから、これを契機として、県民のスポーツへの関心が一層高まるとともに、競技力の向上や指導体制の充実、更にはスポーツ施設の充実が図られ、また、四国遍路文化で育んだ「お接待」の心で来県者へのおもてなしの機運が醸成されるなど、その成果が強く実感されるところである。そして、私たちは、愛顔(えがお)つなぐえひめ国体・えひめ大会を一過性のイベントとすることなく、今後、こうした成果を、大会開催後も継続し、更に発展させ、有効に活用し、県民の財産として引き継いでいかなければならない。
ここに、私たちは、全ての県民が生涯にわたって、自らの体力、年齢、技術、目的等に応じて、身近に、そして気軽にスポーツに親しみ、若しくは自らを鍛え、又はスポーツを支える活動に参画できるよう、スポーツに関わる環境の整備その他のスポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、健康で心豊かな県民生活や活力ある地域社会を実現するため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、スポーツの推進に関する基本理念を定め、県の責務、市町との連携及びスポーツ団体(スポーツ基本法(平成23年法律第78号)第2条第2項に規定するスポーツ団体をいう。以下同じ。)の役割について明らかにするとともに、スポーツの推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、当該施策を総合的かつ計画的に実施し、もって県民の心身の健全な発達と活力ある地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第2条 スポーツは、次に掲げる事項を基本として推進されなければならない。
(1)スポーツを行う者の安全の確保に必要な配慮がなされるとともに、スポーツを通じて県民の心身の健康の保持増進が図られること。
(2)全ての県民が生涯にわたって、自らの体力、年齢、技術、目的等に応じてスポーツに親しむことができること。
(3)学校、スポーツ団体、家庭、地域住民その他の関係者間の連携により、成長過程にある子どもの心身の健全な発達並びに体力及び運動能力の向上が図られること。
(4)障がい者(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病を原因とする障害その他の心身の機能の障害(以下「障がい」という。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。以下同じ。)が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障がいの種類及び程度に応じて必要な配慮がなされるとともに、障がい者の社会参加の推進に寄与すること。
(5)本県に関わるスポーツ選手又はスポーツチームが国際的又は全国的なスポーツの競技会において優秀な成績を収めることができるよう、競技水準の向上のための関係者間の連携が図られ、必要かつ効果的な施策が実施されること。
(6)スポーツを通じて世代間及び地域間の交流の基盤が形成され、更にその交流が促進されるとともに、本県に関わるスポーツ選手又はスポーツチームの活動を応援する社会的機運を高め、地域の一体感及び活力が醸成されること。
(県の責務)
第3条 県は、前条に定める基本理念にのっとり、知事、教育委員会その他の関係機関が相互に連携を図りながら、スポーツの推進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、前項の施策を策定し、及び実施するに当たっては、県民並びに学校、スポーツ団体、健康及び福祉に関わる団体、企業その他の関係団体との連携に努めるものとする。
(市町との連携)
第4条 県は、市町が地域の特性に応じたスポーツの推進に関する施策を策定し、及び実施することを促進するため、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
(スポーツ団体の役割)
第5条 スポーツ団体は、第2条に定める基本理念にのっとり、スポーツの推進に主体的に取り組むよう努めるとともに、県、市町及び他のスポーツ団体その他の関係団体との協働に努めるものとする。
(推進計画)
第6条 県は、スポーツの推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、その実情に即したスポーツの推進に関する計画(以下「推進計画」という。)を策定するものとする。
2 推進計画は、スポーツの推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本事項その他の必要事項について定めるものとする。
(健康の保持増進等)
第7条 県は、スポーツ活動の推進に当たってはスポーツ事故の防止に努めるとともに、県民が運動を通じ、心身の健康の保持増進、疾病予防、高齢者の介護予防など、健やかな生活を送るために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(生涯スポーツの推進)
第8条 県は、子どもから高齢者まで、県民が生涯にわたって、体力、年齢、技術、目的等に応じて身近にスポーツに親しむことができるよう、スポーツとして行われるレクリエーション活動その他のスポーツ活動に参加する機会の提供、地域スポーツクラブ(地域の住民が主体的に運営するスポーツ団体で、体力、年齢、技術、目的等に配慮しつつ、地域の住民に対しスポーツ活動に参加する機会を提供するものをいう。以下同じ。)の育成、地域におけるスポーツ活動を担う人材の育成その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(子どものスポーツ活動の推進)
第9条 県は、子どもの心身の健全な発達並びに体力及び運動能力の向上を図るため、スポーツ活動に参加しやすい環境づくり及び参加する機会の提供並びに学校、スポーツ団体、家庭、地域住民その他の関係者との連携による取組の促進その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(学校におけるスポーツ活動の推進)
第10条 県は、学校におけるスポーツ活動の充実を図るため、体育に関する教員の資質の向上、地域におけるスポーツの指導者の確保及び活用その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(障がい者のスポーツ活動の推進等)
第11条 県は、障がい者が自主的かつ積極的にスポーツ活動に参加することができるよう、その障がいの種類及び程度に応じたスポーツへの参加の機会の提供、障がい者のスポーツ活動に携わる人材の育成その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(競技水準の向上)
第12条 県は、競技水準の向上を図るため、市町、スポーツ団体等と協力し、スポーツ選手の総合的かつ計画的な育成、スポーツ指導者の養成及び資質の向上並びにその確保及び活用、スポーツ医・科学の活用その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
2 県は、優秀なスポーツ選手及び指導者が、生涯にわたりその能力を幅広く社会に生かすことができるよう、活躍できる環境の整備その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(スポーツを通じた交流の促進及び地域の活性化)
第13条 県は、地域住民のスポーツを通じた交流を促進し、地域に根差したスポーツの振興を図ることにより、地域住民の一体感を醸成し、地域を活性化させるため、地域スポーツクラブの支援、プロスポーツの活用、スポーツツーリズムの推進、県内で開催される国内外のトップレベル選手の強化合宿、全国規模のスポーツ大会等への支援、スポーツ大会等を支えるボランティア活動の促進その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(スポーツ施設の整備及び有効利用の促進)
第14条 県は、県民のスポーツ活動の場の充実を図るため、県が設置するスポーツ施設(当該スポーツ施設の設備を含む。以下同じ。)の整備並びに機能の維持及び改善に努めるとともに、県が設置する学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校をいう。)の教育に支障のない限り、当該学校のスポーツ施設を県民がスポーツ活動の場として有効に利用することができるよう努めるものとする。
2 県は、県及び市町が設置するスポーツ施設に関し、市町と連携して利用状況の情報提供を行うなど、有効利用の促進に努めるものとする。
(顕彰)
第15条 県は、スポーツで特に優秀な成績を収めた者及びスポーツの推進に特に功績があったと認められる者の顕彰を行うものとする。
(財政上の措置)
第16条 県は、スポーツの推進に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附則
1 この条例は、公布の日から施行する。
2 この条例の施行の際現に策定されている県のスポーツの振興に関する計画は、第6条第1項の規定により策定された推進計画とみなす。