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コロナ禍の経験を踏まえ、必要な人が受けられる生活保護制度へと見直すことを求める意見書
第373回(令和3年2月)定例会
提出議案【議員提出の部】
コロナ禍の経験を踏まえ、必要な人が受けられる生活保護制度へと見直すことを求める意見書
今年3月3日の厚生労働省の集計で2020年の生活保護申請は22万3,622件、前年比0・8%(1,672件)増加し、特に昨年の12月の申請は、1万7,308件、前年同月比6・5%の増加で、前年同月比では4か月連続して増加しており、コロナ禍が国民の暮らしを直撃していることが明らかとなった。
しかし、日本の生活保護の捕捉率は先進諸国と比較して極めて低く、2018年が22.9%と、生活保護を受給する資格があったとしても、約8割の方が受給できていない状況にある。
その背景には依然として、「生活保護は恥だ」とする風潮や、親族への扶養照会など、申請を躊躇させる制度上の問題があると推察できる。
そのような中、厚生労働省は昨年12月、ウェブサイトに「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」と掲載した。そして、誤解されがちな点も例示し、同居していない親族に相談してからでなければ申請できないことはない、あるいは住むところがなくても、持ち家があっても申請ができ、必要な書類が揃っていなくても申請ができるなど、細かく示されている。
そして、今年1月28日、国会で厚生労働大臣は「扶養照会は義務ではない」とし、2016年7月に保護を開始した1.7万世帯に関し、照会件数は3.8万件、そのうち金銭的援助が可能、と回答したのは約600件に過ぎない」と答弁しており、扶養に結び付かない扶養照会に膨大な時間と人件費をかけて行う必要はない。
また、今年2月22日、大阪地裁は、生活保護基準の引き下げの取り消しを求める訴訟の判決において、物価下落率算出の根拠とする厚生労働省の指数に対し、「消費者物価指指数よりも大きい下落率を基に改定率を決めており、統計などの客観的な数値との合理的関連性に欠いた」との判断を下した。
とりわけコロナ禍にあって、SDGsに掲げる「誰一人取り残されない社会」を目指し、国民の権利として、ためらうことなく申請できる生活保護制度へと、見直すことが急がれている。
よって、愛媛県議会は政府に対し、以下の事項を求める。
記
- 生活保護の申請が国民の権利であること、及び制度に対する誤解を解消すべく、さらなる周知徹底を図ること。
- 扶養照会を廃止すること。
- 生活保護費や事務費の自治体負担を無くし、国が負担すること。
- 引き下げが続いている生活保護基準の引き上げを図ること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和3年3月19日
愛媛県議会
提出先
内閣総理大臣
財務大臣
総務大臣
厚生労働大臣
内閣府特命担当大臣(経済財政政策)