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環太平洋連携協定(TPP)に関する意見書
第319回(平成22年11月)臨時会
提出議案【議員提出の部】
環太平洋連携協定(TPP)に関する意見書
本県は、瀬戸内特有の温暖な気候を活かし、果樹、畜産、米を基幹に多彩な農産品が生産され、農業者のたゆまぬ努力により、中四国一の農業生産額を誇っている。
こうした中、政府におかれては、今月横浜で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)を前にして、環太平洋連携協定(TPP)を含む「包括的経済連携に関する基本方針」を明らかにされたところである。
我が国における他国との貿易をはじめとした連携は、これまで関税における農産物等の例外品目を設定することができるEPAのみであり、現在12カ国と締結または締結合意している。
一方、TPPは、これまでのEPAとは性質が異なり、原則全ての関税撤廃を目指すハイレベルな協定であるほか、非関税障壁の撤廃や人的な交流の緩和まで幅広い分野での自由化交渉であり、特に米国や豪州などの農産物輸出大国が参加表明していることから、農業・農村への影響は非常に大きいと予想され、農林水産省によるとTPP参加による関税の完全撤廃により、国内の農業生産額は主要な品目だけで4.1兆円程度減少(平成20年農業生産額の48%に相当)し、食料自給率は14%程度まで落ち込むとの試算もなされている。
加えて、その影響は、農業と密接に結びついている食品加工や流通・販売、観光など関連する広範囲な産業にも波及していくことが予想され、現在も厳しい状況にある本県経済を一層冷え込ませることも懸念される。
今回の方針では、日本農業の強化策を検討する「農業構造改革推進本部(仮称)」を設置することにはなっているものの、現下の我が国農業の情勢は、高齢化等により、極めて厳しいものがあり、TPPへの対応いかんでは、国内農業の疲弊と農村社会の崩壊を招き、将来に大きな禍根を残すことにつながるものと大変危惧するものである。
よって国におかれては、TPPに関しては、下記事項を踏まえたより慎重な対応を行うよう強く要望する。
記
- TPPへの対応については、国内の農業・農村に甚大な被害をもたらすのみならず、我が国の食料安全保障のあり方にも影響が及ぶ極めて重要な事柄であることから、今後の検討に際しては、国民に対し十分な説明責任を果たすとともに、国民からの意見聴取や国会での審議等を通じ国民の合意が得られるよう慎重を期すこと。
- 国際貿易交渉に当たっては、食料の安定供給の確保、農業の持続的発展、農村の振興等に十分配慮するとともに、「多様な農業の共存」という基本理念を堅持し、「守るべきものは守る」というこれまでの政府の姿勢を貫徹すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年11月9日
愛媛県議会
提出先
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
外務大臣
農林水産大臣
経済産業大臣
内閣官房長官
国家戦略担当