本文
愛媛県食の安全安心推進条例
第309回(平成20年12月)定例会
提出議案【議員提出の部】
愛媛県食の安全安心推進条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第10条)
第2章 施策の基本となる事項(第11条―第21条)
第3章 施策の推進(第22条―第26条)
第4章 愛媛県食の安全安心推進県民会議(第27条)
第5章 雑則(第28条)
附則
国際化の進展に伴い、私たち県民の日々の食卓は世界中からもたらされた多種多様な食材でにぎわい、豊かな食生活を享受することが可能となった。
一方、食生活の基本となる食品の安全性を損なう危機的事態が国内はもとより世界各地で次々と発生するなど、食を取り巻く環境は大きく変化しており、私たち県民は、この状況に的確に対応していかなければならない。
言うまでもなく、食こそ生命と生活の礎であり、食の安全安心は、県民にとって最も身近で切実な願いの一つである。
このため、県、市町及び食品関連事業者はもとよりすべての県民が、一体となってこれらの課題に果敢に挑み、その解決を図ることによって食の安全安心を推進するとともに、将来に向かってえひめの豊かな食文化を次の世代に継承していくことが不可欠である。
ここに、食の安全安心について、すべての県民の参加と相互理解の下、基本理念を明らかにしてその方向性を示し、必要な施策を総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、食品の安全性及び食品に対する安心感の確保(以下「食の安全安心」という。)に関し、基本理念を定め、並びに県及び食品関連事業者の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに、食の安全安心のための施策の基本となる事項を定めることにより、食の安全安心に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって県民が健康で安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 食品 すべての飲食物(薬事法(昭和35年法律第145号)に規定する医薬品及び医薬部外品を除く。)をいう。
(2) 食品等 食品(その原料又は材料として使用される農林水産物を含む。)並びに添加物(食品衛生法(昭和22年法律第233号)第4条第2項に規定する添加物をいう。)、器具(同条第4項に規定する器具をいう。)及び容器包装(同条第5項に規定する容器包装をいう。)をいう。
(3) 生産資材 農林漁業において使用される肥料、農薬、飼料、飼料添加物、動物用の医薬品その他食品の安全性に影響を及ぼすおそれがある資材をいう。
(4) 食品関連事業者 食品等又は生産資材の生産、輸入又は販売その他の事業活動を行う事業者であって、県内に事業所、事務所その他の事業に係る施設又は場所を有する者をいう。
(基本理念)
第3条 食の安全安心は、このために必要な措置が県民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に講じられることにより、行われなければならない。
2 食の安全安心は、食品等の生産から消費に至る一連の行程の各段階において、県民の健康への悪影響を未然に防止する観点から、適切に行われなければならない。
3 食の安全安心は、このために必要な措置が県民の意見に十分配慮しつつ科学的知見に基づき講じられるとともに、県及び食品関連事業者による食品の安全性に関する積極的な情報の公開並びに県、県民、食品関連事業者その他関係者相互間の信頼と理解の下に行われなければならない。
(県の責務)
第4条 県は、前条に定める食の安全安心についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、食の安全安心に関する施策を総合的に策定し、及び計画的に実施する責務を有する。
(食品関連事業者の責務)
第5条 食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たって、自らが食の安全安心について第一義的責任を有していることを認識して、食の安全安心のために必要な措置を食品等の生産から販売に至る一連の供給の行程(以下「食品等供給行程」という。)の各段階において適切に講ずる責務を有する。
2 食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動において取り扱う食品等又は生産資材により県民の健康への悪影響が発生し、又はそのおそれがある場合には、当該悪影響の発生又は拡大の防止に必要な措置を的確かつ迅速に講ずる責務を有する。
3 前2項に定めるもののほか、食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、国、県又は市町が実施する食の安全安心に関する施策に協力する責務を有する。
(県民の役割)
第6条 県民は、自ら健康で安心な生活を確保する自覚を持ち、食品等の安全性についての知識及び理解の向上に努めるものとする。
2 県民は、食の安全安心に関する施策に対して意見を表明するよう努めることにより、食の安全安心の推進に積極的な役割を果たすものとする。
(国等との連携等)
第7条 県は、食の安全安心に関する施策の推進に当たっては、国、他の都道府県及び市町と密接な連携を図るよう努めるものとする。
2 県は、食の安全安心に関する施策の推進に当たっては、消費者団体、食品関連事業者の組織する団体その他の関係団体との協働に努めるものとする。
(環境に及ぼす影響への配慮)
第8条 食の安全安心を推進するに当たっては、県、食品関連事業者及び県民は、その取組が環境に及ぼす影響について配慮するものとする。
(財政上の措置)
第9条 県は、食の安全安心に関する施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(施策の実施状況の報告及び公表)
第10条 知事は、毎年度、食の安全安心に関して講じた施策の実施状況について、議会に報告するとともに、これを公表しなければならない。
第2章 施策の基本となる事項
(推進計画の策定)
第11条 知事は、食の安全安心に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、食の安全安心の推進に関する計画(以下「推進計画」という。)を定めなければならない。
2 推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 食の安全安心に関する基本的な方向
(2) 食の安全安心のための措置に関する事項
(3) 前2号に掲げるもののほか、食の安全安心に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 知事は、推進計画を定めるに当たっては、あらかじめ、愛媛県食の安全安心推進県民会議の意見を聴くとともに、県民の意見を反映するために必要な措置を講ずるものとする。
4 知事は、推進計画を定めたときは、遅滞なくこれを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、推進計画の変更について準用する。
(推進体制等の整備)
第12条 県は、食の安全安心に関する施策を総合的に推進するために必要な体制の整備を図るものとする。
2 県は、食品等による人の健康に係る重大な被害が生ずることを防止するため、当該被害が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、迅速かつ適切に対処するための緊急時の体制及び当該被害の発生の防止に関する体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
(食品等供給行程の監視等及びその体制の整備)
第13条 県は、食品等供給行程の各段階において、食の安全安心に関し適切な取扱いが行われていることを監視し、指導し、及び検査するために必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、前項の措置の実施に当たっては、関係機関と連携を図るとともに、機動的、効果的かつ効率的に実施するための体制の整備に努めるものとする。
(安全な食品等の生産及び供給の促進)
第14条 県は、安全な食品等の生産及び供給を促進するため、食品関連事業者による食品等の適切な生産及び供給の管理が行われるよう必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、安全な農林水産物の生産を促進するため、農林水産業の振興に関する施策の充実に努めるものとする。
(自主的な衛生管理の促進)
第15条 県は、食品関連事業者による自主的な衛生管理が食の安全安心上重要であることにかんがみ、食品関連事業者が食の安全安心のために行う食品等の取扱いに関する基準の設定その他の自発的な取組を促進するよう必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、前項の措置を円滑に実施するため、食品等の製造、加工等を行う工程の安全性を保証するための制度の整備及びその普及に努めるものとする。
(食品表示制度の適切な運用の確保等)
第16条 県は、食品の表示が食の安全安心に関し重要な役割を果たしていることにかんがみ、食品の表示の制度の適切な運用を確保するとともに、食品の生産、輸入、販売その他の事業活動を行う事業者が県民の食品に対する安心感に配慮した方法で食品の表示をするよう必要な措置を講ずるものとする。
(情報公開、情報の共有及び相互理解の促進)
第17条 県は、食品関連事業者が保有している食の安全安心に関する情報に関して、食品関連事業者による積極的な公開又は提供が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、食の安全安心に関する情報の収集、整理、分析及び公開に努めるとともに、県、県民、食品関連事業者その他関係者相互間の情報の共有及び相互理解を図るため、食の安全安心に関する情報及び意見の交換が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。
(県民の意見の反映)
第18条 県は、第11条第3項に定めるもののほか、食の安全安心に関し、広く県民の意見を求めるために必要な措置を講じ、その意見を施策に反映するよう努めるものとする。
(調査研究等の推進等)
第19条 県は、食の安全安心に関する調査研究及び技術開発を推進し、及びその成果を普及するために必要な措置を講ずるものとする。
(人材の確保及び育成)
第20条 県は、食品等及び生産資材の安全性に関して専門的な知識を有する人材を確保し、及び育成するために必要な措置を講ずるものとする。
(教育及び学習の振興等)
第21条 県は、県民が食の安全安心に関する知識と理解を深めるため、食の安全安心に関する教育及び学習の振興、広報活動の充実その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、食の安全安心に関する県民の意識の向上を図るため、食育の推進を図るものとする。
3 県は、食の安全安心の推進を通じて、県内の安全で良質な農林水産物の地産地消(地域で生産された農林水産物を当該地域で消費することをいう。)の推進を図るものとする。
第3章 施策の推進
(自主回収報告制度)
第22条 食品関連事業者(食品等を生産し、採取し、製造し、輸入し、加工し、又は販売する事業者に限る。以下この条から第24条までにおいて同じ。)は、県内において、その生産し、採取し、製造し、輸入し、加工し、又は販売した食品等の自主的な回収に着手したとき(法令に基づく命令又は書面による回収の指導を受けて回収に着手したときを除く。)は、直ちに、規則で定めるところにより、知事に報告しなければならない。ただし、食品関連事業者が食品衛生法に基づく条例の規定により報告するときは、この限りでない。
2 知事は、前項本文の規定による報告に係る回収の措置が、人の健康への被害の発生又はその拡大を防止する上で適切でないと認めるときは、当該食品関連事業者に対し、回収の措置に関する指導その他の必要な指示をすることができる。
3 第1項本文の規定による報告を行った食品関連事業者は、当該報告に係る回収を終了したときは、速やかに、規則で定めるところにより、その旨を知事に報告しなければならない。
(自主回収の公表等)
第23条 知事は、前条第1項本文若しくは第3項の規定による報告又は食品衛生法施行条例(平成12年愛媛県条例第16号)別表第1の1の項(11)イの規定による報告があったときは、速やかにその旨を公表するとともに、当該報告に係る情報を関係行政機関の長に提供しなければならない。
(自主回収への協力)
第24条 食品関連事業者は、その取り扱う食品等について、他の事業者によって自主的な回収が行われるときは、円滑かつ確実な回収のために必要な協力をするよう努めるものとする。
(危害情報の申出)
第25条 県民は、人の健康に悪影響を及ぼすおそれがある食品に関する情報を入手したときは、規則で定めるところにより、知事に対し、その旨を申し出ることができる。
2 知事は、前項の規定による申出があったときは、速やかに必要な調査を行い、当該申出の内容に相当の理由があると認めるときは、関係法令及びこの条例に基づく必要な措置を講ずるものとする。ただし、当該申出の内容が他の行政機関の所管に属するときは、当該申出の内容を当該行政機関の長に通知するものとする。
(顕彰の実施)
第26条 知事は、食の安全安心に関し、特に優れた取組をした者の顕彰に努めるものとする。
第4章 愛媛県食の安全安心推進県民会議
第27条 第11条第3項の規定により知事に対し意見を述べさせるとともに、食の安全安心に関する重要な事項を調査審議させるため、愛媛県食の安全安心推進県民会議(以下「推進県民会議」という。)を置く。
2 推進県民会議は、委員10人以内で組織する。
3 委員は、学識経験のある者その他適当と認める者のうちから、知事が任命する。
4 専門の事項を審査させ、又は調査審議させるため必要があるときは、推進県民会議に専門委員を置くことができる。
5 専門委員は、学識経験のある者のうちから、知事が任命する。
6 委員の任期は、3年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
7 委員は、再任されることができる。
8 専門委員は、第4項に規定する専門の事項の審査又は調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
9 委員及び専門委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
10 第2項から前項までに定めるもののほか、推進県民会議の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第5章 雑則
第28条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、平成21年4月1日から施行する。ただし、第22条、第23条及び第25条の規定は、同年10月1日から施行する。