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平成27年仕事始め式知事あいさつ
日時:平成27年1月5日(月曜日)10時
場所:県庁第二別館6階大会議室
皆さん、明けましておめでとうございます。
今年は、カレンダーの関係で少々長めの休みになりましたけれども、十分に英気を養われたのではないかと思います。年が明けまして、本当に今年がこうなればいいなというふうな素晴らしい天候で、この仕事始めを迎えました。仕事始めに当たり、若干、1年間のこれからの予想、そして県の課題について触れさせていただきたいと思います。
特に今年は、やはり何といっても、経済情勢が非常に重要なポイントを迎える年になるのではないかと思っています。ご案内のとおり、国の方で、いくつかの政策展開がここ1、2年の間に出されました。その一つは金融緩和。その一つが財政出動だったわけでありますけれども、この効果というものが、円安、そしてまた一時的な株高という数値で表れてきました。しかし、これまで何度も言ってきましたが、あくまでもカンフル剤的な、デフレ脱却の教科書どおりの政策でありますから、その効果があるうちに離陸できるかできないか、ここに命運がかかっているわけであります。それを離陸させるための3本目の政策として、成長戦略というものが掲げられていますが、この中身は、まだ今のところ見えてはいないわけでありまして、これは一体、どのような形で進めていくのか、これは、注目に値する政策展開になるのではないかと思います。
一方で、地方でできることは何かということに焦点を当てて、知恵を絞ってきましたが、愛媛県においては、その答えを「実需の創出」というところに求めました。これを達成しなければ、実際の経済というものは上昇しないということで、「実需の創出」というのを合言葉に、営業本部の設置等を行って、県職員の皆さんに、「総合商社愛媛の営業マンたれ」というキーワードの下、県内産業の後押しをするという経済政策の推進に邁進してきたところです。こうした効果は、しっかりと積み上がってきていますけれども、まだまだこれからやるべきことはたくさんあると思います。
そんな中、今日、触れさせていただきたいのは、県の技術職員の下支えというものを、ぜひ事務職員の皆さんにも受け止めておいていただきたいという点です。例えば、愛媛県内には、ご案内のとおり、さまざまな研究所があります。研究所の技術職員の活躍というものが、県内の産業の育成・強化に大きく寄与しているということ、これは間違いのない事実です。
東からいきますと、紙の研究所。この施設の研究成果により、四国中央市を中心とする日本一の紙産業集積エリアというものが育成されてきた背景があります。あるいは、新しく施設が完成しましたが、繊維関係の研究所では、今、非常に好調なタオル産業、今治のタオル産業を中心とした業界の下支えをやってきた歴史があります。あるいは、窯業の研究所。こちらの研究は、伝統工芸の砥部焼であるとか、あるいは菊間瓦、こうした伝統産業の下支えになってきた背景があります。その他にも、産業技術研究所では、現在、地元に工場を持っている炭素繊維の新たな展開というものの研究や、EV関係の電気自動車の研究に邁進しているところです。そして、林業の関係では、この研究では、今まで「媛すぎ・媛ひのき」という命名をしましたが、全国に誇れる高品質な木材の生産。また、これからはCLTという新しい工法の展開が可能性として生まれてきていますから、場合によっては、飛躍的に木材の需要が高まる可能性が出てきています。そうした下準備の研究も積み重ねているところであり、業界にとっては、非常に重要な位置付けになっているところです。
こうしたものづくり以外の分野でも、技術職員の研究成果というのが大きな貢献をしているのが、1次産業の分野であります。その代表格は、果樹研究センターやみかん研究所。この技術の追求によって、国内では最高峰の「紅まどんな」を筆頭とするような、あらゆる品種の改良を重ねてきました。この結果が、全国一の果樹の生産量、豊富な種類、そして多様性、さらには周年供給体制という、他県では見られないような生産地域の育成に直接結びついたわけです。
もう一つは水産関係ですが、養殖日本一の漁業生産高を誇る愛媛県は、この存在なくして語れない歴史があります。タイ、ブリをはじめとする代表的な魚種のほか、昨今では、例えばフグやマグロ、あるいはヒラメやマハタなど、こうした高級魚の養殖技術の研究成果が現実化しているところでありますし、また、テレビでもご覧になった方もいると思いますが、新しい魚種として、「スマ」という新種の魚種の開発を行っています。現在、この魚種の開発を行っているのは、和歌山県と愛媛県の研究所のみですから、世界で初めてこの完全養殖に成功しますと、愛媛県の養殖業者の安定的な収入に直接つながっていく可能性を秘めていると確信をしています。まだまだ時間はかかると思いますけれども、こうした研究所の成果というものが、直接、産業の育成につながる一つの好例になればと期待をしているところです。
さらには、その他にも農業関係の研究所では、昨年は二つの全国的な品種の開発に成功しました。一つは、花の分野ですが、日本で初めてピンク色の色彩を放つデルフィニウムの開発に成功しました。命名は、「さくらひめ」と名付けましたが、昨年行われた全国的なフラワーショーで軒並み大賞を受賞するという、非常に好スタートを切ったばかりで、今後の生産拡大に大いに期待をしているところです。さらに、11月には、イチゴの新しい品種として、「紅い雫」という、これまでにない、見た目も味も抜群の品種が愛媛県に誕生しました。まだまだ生産量は少ないですが、これから県内各地に拡大し、これも農業関係者の収入増に直接つながればと期待をしているところです。
また、肉の関係でも、養鶏研究所では、日本で最高の地鶏というテレビ番組の表彰をいただいた「媛っこ地鶏」の開発に成功し、そしてまた、畜産研究センターでは、「愛媛甘とろ豚」の開発に成功しました。さすがに品種が良いだけあって、外に売り込んでいくときでも、直接触れていただいたら、即ビジネスが成立するような現場を幾度となく実体験してきました。この「媛っこ地鶏」とそしてまた「愛媛甘とろ豚」に続いて、新しいコンセプトの牛肉の開発が4年計画で進んでいるところです。黒毛和牛の赤身という、他の県ではやったことのない開発が昨年試食段階を迎え、今年の秋に一部市場に出せるという見込みが立ってきました。
このように、県の技術職員の皆さんは、ものづくり、そして1次産業で、コツコツと研究し、全ての研究はだいたい5年から10年かかるそうですが、こうした積み重ねが愛媛県の産業を下支えしているということを、全職員共有しておいていただきたいと思います。
ただ、いくら良いものをつくりあげても、これが売れなければ、産業の活性化には結び付かない。そこで、先ほど申し上げました、県庁職員は「総合商社愛媛」の職員として全員が「営業マンたれ」という意識を持って、いろんなところにこうした愛媛の「スゴ技」「すご味」「すごモノ」を紹介するという習慣を身に付けていただきたいと思います。
このことが、「実需の創出」に必ずやつながってくると思いますので、この「実需の創出」によって、愛媛県は厳しい経済環境を勝ち抜いていくんだという道筋を付けていきたいと思います。経済が活性化すれば、当然そこには雇用が発生します。そして税収が上がってきます。そのことがあって初めてその税収を財源に、福祉の充実、あるいは教育の充実、全てにつながってきますが、自分の担当する分野に精通することはもとより、これは大前提でありますが、県の職員であるからには、ある程度の全体像というものを常に鳥瞰図的に見極めながら、その中で、何ができるかを自らに問い続けていただきたいと思います。
さて、昨年は、半年間にわたって、「瀬戸内しまのわ2014」というイベントを行いました。4年前に、「しまなみ海道を活用して国際的なサイクリング大会を」という大きな目標を立てましたが、4年前の時点では、実際、立てたのはいいけれども、どうやればいいのか明確な答えがあったわけではありません。方向性を示すことはできても、それは1人の人間の力の限界であります。それを関わる職員が知恵を絞って、どんどんそこに色を塗りながら、絵を完成していく。これが、行政のあるべき姿だと思っています。
そういう中で、4年間、部局を超えて、しまなみ海道のサイクリストの聖地化へ、そして、地理的なハンディを持っている島しょ部の魅力を最大限に輝かせることにチャレンジしたのが、昨年の「しまのわ2014」でありました。予想以上の成果というものが出たのではなかろうかと思いますし、また、日本で初めて供用済みの高速道路を止めて自転車に開放するという道筋、そしてまた、日本国内最大規模のサイクリストの大会ということで、その受け入れ態勢の準備は、本当に多くの方々が関わったと思いますけれども、見事な結果を出していただいたのではないかと思います。その意味で、県庁職員のマンパワーの高さ、力を合わせて前向きな方向を向いたときに、あらゆることが可能になるという可能性、ポテンシャルというものを痛感した半年間でもありました。こうしたことから、今後とも、さらに愛媛県の活性化に向かって頑張っていきたいと思います。
昨年の11月で、1期目4年間の仕事を終えさせていただきました。私は、審判を仰ぐ立場でありましたけれども、9割近い得票率という大変多くの期待をいただいて、12月から2期目をスタートさせていただきましたが、これは何も自分に対する評価ではありません。また、自分に対する期待だけでもありません。4年間、県の職員の皆さんと一緒に取り組んできた成果に対する評価、そしてまた、今後に対する期待というものがその得票率に表れているのだろうと思います。
皆さんと一緒にスタートさせていただいた地方の時代に備えた意識の改革、組織の改革、そして、メニュー選択型行政から政策立案型行政への脱皮をし、時代に挑戦するという姿勢、それを具体化するために県内20の市町との新しい関係を構築するという方向性、こうしたこと全てが選挙戦での期待につながっていると思いますので、ぜひ皆さんも、東予・中予・南予、それぞれの地域も含めて、そうした期待というものが大きい中での今年のスタートということを受け止め、仕事に向き合っていただきますよう、よろしくお願い申し上げたいと思います。
さて、そのときに、大きな三つのテーマを掲げました。4年間に起こった新たな事象に対する対応であります。その一つは、東日本大震災発生に伴って、多くの県民の皆さんに広がった防災・災害に対する考え方の変化にどう対応するかという一つの柱。そして二つ目は、少子高齢化の進展に伴う人口減少という新たな課題についてどう向き合っていけばいいのかという柱。そして三つ目は、これは本当にどうなるか分かりません、失敗させるわけに絶対にいかないという経済政策。こうしたことが今回の公約の柱になっています。できるだけ早く、この公約の年次計画へのビルトインと、そしてまた先ほど申し上げましたように、自分にできることは大きな方向性を示すというところまででありますから、そこからまた皆さんが、ありとあらゆる知恵を絞ってどんどん膨らませていってほしい、充実させていってほしい、そうした政策づくりにもぜひ邁進をしていただきますよう、お願いを申し上げたいと思います。
そんな中、3年後、愛媛県で国体が開催されます。まだ3年あるというよりは、もう3年しかないと捉えたほうがいいと思います。あっという間に、この3年が過ぎ去ると思いますが、特に国体に向けての施設の整備、そしてまた受入態勢の準備、そしてまた天皇杯獲得のための選手の強化という三つの柱に従って準備を進めていく予定にしておりますが、とりわけ県民の皆さんが大勢関心を持っていただいて、みんなでつながっていくということが大事だと思います。3年後ということもありますから、まだまだ国体に対する認知度というものはどうなのかと感じることがあります。昨年11月の「ゆるキャラグランプリ」で、国体のマスコットキャラクターでもある「みきゃん」が、職員の皆さんの頑張り等により、全国3位になりました。もっともっと県民に広げて、国体を盛り上げるため、今年は優勝を目指して取り組んでいきたいと思っています。
いずれにしましても、今日ここに集いし職員さんだけではなく、県内に散らばっている職員さんも含め、チームワークこそが強さであります。目標を共有して、知恵を出し合い、そして力を合わせて邁進することによって、いかなる課題も乗り越えることができると確信しています。今年1年、また全力で皆さんとともに愛媛県の未来を切り開いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。皆さん、くれぐれも体調管理に気を付けて仕事を充実させていきましょう。
今年もよろしくお願い申し上げまして、仕事始めの挨拶とさせていただきます。