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第61回四国地区人権教育研究大会(愛媛大会)知事祝辞
日時:平成26年7月10日(木曜日) 10時
場所:ひめぎんホール
皆さんおはようございます。第61回四国地区人権教育研究大会が愛媛の地で開かれることになり、四国各県から大勢の皆さんに御来県をいただきました。県を代表いたしまして、心から歓迎申し上げます。
人権問題は、ある意味では人類の歴史そのものなのかもしれません。長い歴史の中で、人種差別、あるいは民族差別、さまざまな差別が行われてきました。
近代を迎え、こうしたことに真正面から立ち向かう指導者が現れ始めました。アメリカ合衆国では、エイブラハム・リンカーンが「人は生まれながらにして平等である」という強いメッセージを多くの方々に向かって発信をいたしました。同じ時期、日本においては、教育者である福沢諭吉が、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」という極めて分かりやすい、今では多くの方が当たり前のように受け止めている強いメッセージを発信いたしました。多くの方はこのような話を正面から受け止めて、差別をなくす気持ちを強く持ち始めたということは論をまたないところでありますけれども、しかしながら、あれから百数十年の歴史の経った現代におきましても、差別の問題は解消したということはありません。
先ほどからお話がありますけれども、同和問題、あるいは障害者差別、女性差別、いじめ、虐待。思い浮かぶだけでも、数多くの問題が現代社会にまだ横たわっているわけです。
そして、時代の変革とともに新たな課題も浮上しています。インターネットの普及によって名前を出さずに中傷誹謗する、そうした人たちの存在もクローズアップされるようになりました。また、悲しいことに、あってはならない、四国遍路道での書き込み。これはもう今日お集まりの四国全員の課題でもありますけれども、こうしたことが起こってしまうわけであります。
なぜ根絶やしにできないのか。それはやはり人権の問題が人々の心の奥底に潜んでいるものであるというところに至るからではないかと思っています。ということは、常に根絶を目指して歩みを止めてはならない、教育の面、活動の面で、それぞれが知恵を絞り、工夫を凝らしながら、真正面から常に向き合っていく必要があるということでございます。
例えば、いじめ問題。以前、私は松山市長を務めさていただいておりましたけれども、当時、学校におけるいじめ問題が大きくクローズアップされました。どこも、いじめはよくないんだ、学校へ呼び掛けをするんですけれども、果たしてそれで解決するのだろうか。それが疑問でありました。一つの方法として、主役である子どもたちに立ち上がってもらおうという事業を起こしたのが、今から10年ほど前のことであります。いじめをなくそうミーティング。全ての小中学校の代表に、なぜいじめが悪いことなのか、なぜいじめが発生するのか、どうすればそれを解消できるのか、そのために共通項目として何をしなければならないのか、議論をしてもらう。子どもたちが真剣にグループディスカッションで議論を積み重ねてくれました。そして、その大人数で集約した課題をそれぞれの学校に持ち帰って一斉に問題解決に向け取り組んでいく、そうした事業だったわけでありますけれども、効果が着実に挙がっていることを実感いたしました。今、この体験をもとに県全体で同じ運動を起こしていこうという取り組みを教育委員会の方で進めているところでありますけれども、今日の研究大会を通じ、それぞれの地域において人権問題解決に向けたさらなる歩みが進むことを心から御期待申し上げます。
さて、もうすぐ本格的な夏を迎え、各地域ではいろいろな活性化への取り組みが行われていると思いますが、ちょっと紹介させていただきますと、愛媛県は、今年、島しょ部にスポットライトを当てまして、「瀬戸内しまのわ2014」というイベントを7カ月間にわたり展開しています。大小さまざまな島、そしてしまなみ海道。そこを舞台に300を超えるイベントを7カ月にわたって展開するわけでありますけれども、おかげさまで、先般、大手旅行サイト運営会社が発表した、今年の夏の旅行動向で、愛媛県が全都道府県の行き先伸び率ランキング全国1位になり、特に今治・しまなみ海道エリアは77.3%増となりました。この瀬戸内しまなみ海道は世界の7大サイクリングロードにも選ばれ、しまなみならではの風光明媚な景観などが多くの人々を魅了しているところでございます。
10月26日には、高速道路の車道部分を利用し、8千人規模のサイクリング大会を開催いたします。世界からサイクリストを招き、スピードを競うわけではなく、ゆっくり走って堪能していただくイベントでございまして、10コースそろっており、どのコースを選んでもどこかでしまなみ海道の車道を走れるというふうにしています。半分以上のコースはすでに埋まってしまっていますけれども、一部まだ残りがございますので、御関心のある方はぜひエントリーをしていただけたらと思います。
また、今年に入り、和田竜氏の歴史小説「村上海賊の娘」が本屋大賞を受賞いたしました。早速この効果が表れているところであり、こうした追い風もうまく生かしながら、そして、サイクリングブームは最終的に四国全体に広げていきたいと思っております。
四国は四つの顔を持つと言われておりますが、一方で四国は一つとも言われています。今日の四国地区大会で、皆さんが心合わせをして、人権問題解決に向けて大きな成果が出ることを御期待申し上げまして、挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。