本文
平成24年仕事始め式知事あいさつ
日時:平成24年1月4日(水曜日) 10時
場所:県庁第二別館6階 大会議室
皆さん、新年明けましておめでとうございます。一昨年の12月から、県政のかじ取りを担わせていただきまして、皆さんとともに1年間歩んでまいりました。1年とはいえ、大変密度の濃かった年ではなかったかと思います。新しい県政のスタートと同時に、御案内のとおり、昨年は、3.11東日本大震災抜きには語れない年になりました。そのことを受け、防災体制の見直し、あるいは原発対応、そして被災地支援、こうしたマニュアルの無い、通常は無かった業務にも取り組まなければならない1年でありましたので、それぞれ皆さんの仕事も大変密度が濃かったものと思います。
最初の1年ということで、自分なりに意識していたことは幾つかありました。
まずは何といっても、もうだいぶ受け止めていただいたと思っておりますけれども、職員の皆さんに対するメッセージとして出させていただいた意識改革。繰り返しになりますが、「何故できないか」から「どうすればできるか」への発想の転換。「自治体に倒産はない」から「自治体に倒産はありえる」への発想の転換。「やってあげている」から「一緒にやる、やらせていただく」という発想の転換。「情報に振り回される」のではなく、「情報を活用する」というスキルのアップ。そして「失敗は隠さず積極的に報告する」という意識への転換。
こうしたことをベースに、3つの課題に向き合った1年でもありました。
その1つ目の課題は組織の把握です。2つ目は基本政策の浸透。そして3つ目は個別政策の種まき。これが1年目に課した自分なりの目標でした。
組織の把握につきましては、皆さんにも受け止めていただく中で、市町との連携チームの発足や終わりなき行政改革へのチャレンジ、また試験制度の導入あるいは今年3月、4月からの組織の改編などを通じて、1つのベースを作る計画でした。誤解の無いよう申し上げたいのは、まず試験制度の問題であり、これはぜひ前向きに受け止めていただきたいと思います。そもそも県庁の職員で、管理職を担って辞められる方は、1年の同じ世代の中で24、5パーセントというのがこれまでの実績です。やはり管理職は狭き門であり、だとするならば、分かりやすく、公平にそのポストを考える必要があるということで導入したのが「課長試験制度」です。もちろん、これは通る時もあれば、落ちる時もあります。しかし、落ちたからといって、決して悲観してほしくないということです。何度でも公平にチャレンジできる、常に扉が開いている制度ですし、また、松山市長時代の経験則からいえば、挫折から大きな成長へとつなげた方はいくらでも誕生していました。先に受かったからといって、その序列が決まるわけではありません。後から来た人がそれなりに実績を出せば、当然の事ながら逆になるということも日常茶飯事です。前向きな気持ちが常に受け止められる公平な制度であることを、この際、皆さんにぜひ受け止めていただいたらと思っています。
また、市町との連携の問題では、例えば、大阪の場合は大阪都構想で一気にこの問題に向き合うという選択をしておりますが、四国、愛媛県の経済力、人口、そうした規模を考えた時に都をつくるのは現実的ではありません。ならば、同じ二重行政の解消をするにせよ、それぞれの身の丈に合ったやり方があるはずで、その答えが愛媛県版の、二重行政解消を目指した市町との連携強化です。この機会に、市町と向き合う気持ちを、今までとはちょっと違った角度で見つめる中で、お互いにWinWinになるような、無駄を排するような結果につながってくれればと、そんなふうにも思っています。
昨年からは、市町との連携強化のために人事交流も活発化しました。一昨年までは、市町への県職員の派遣は1名でしたが、双務契約的な条件変更に伴い、昨年は20名に拡大をしています。県の職員からすれば現場を経験でき、市町の職員からすれば鳥瞰図(ちょうかんず)的に、総合的に政策を見つめる、お互いが欠けている部分を補うような、そんな交流へとつながっていくことを大いに期待しているところです。
今年からは執行リーダー制を導入する予定ですが、「補佐」という、ちょっと責任感が希薄になりがちな制度ではなく、それぞれが「リーダー」を自覚して、思う存分力を発揮していただくような組織改編を、今年4月以降に行う予定です。皆さんも、前向きに、そして止まっていては明日は無いという気持ちで大いにチャレンジをしていただけたらと思っています。
基本政策の浸透につきましては、皆さんのほとんどすべての部署が関係したと思いますけれども、長期計画ができました。この10年を見渡した時には、厳しめの予想、人口減少、高齢化、少子化等々、そうした中で作り上げることが極めて困難な作業であったと思いますが、英知を結集していただきまして、基本政策を盛り込んだ長期計画が完成いたしました。間髪を入れずに個別政策を盛り込んだ4年間のアクションプログラムも完成したところであり、今後、このアクションプログラムに基づき、予算編成等々も基本的には行われていくと思いますけれども、社会の変化、経済情勢の変化、これは非常に大きなものがありますので、この辺りは臨機応変な対応を迫られるであろうと思っています。
次に触れなければいけないのが3.11の東日本大震災のことです。未曽有の大災害をもたらし、本当に多くの方々の価値観を変えるぐらいの大きな問題になりました。愛媛県では、市町と連携し、チーム愛媛を想定する中で、物資の提供や人的派遣を行ってまいりました。
物資の提供につきましては、現地に行っていただいた職員が的確な情報をキャッチし、それを各市町に流すことによって共通した物資を集め、愛媛県が一手に送るという新しい試みを行ったところです。また、人的支援につきましても、救出・救命から復旧・復興へと少しずつ変わってくる人的な要望に的確に対応できるよう、チーム愛媛で配慮したところでありますが、おかげさまで、県内自治体を中心に2000人を超える人たちが現地に入りました。県職員だけでも延べ人数で1200人が、東北3県に行ってお手伝いをしている状況です。現在は、復旧の段階に入り、港湾、道路あるいは水道など、社会基盤の復旧整備が課題になっており、長期滞在の技師の皆さんにがんばっていただいているところでありますけれども、現地に入った1200人の県職員すべての皆さんに、本当に御苦労さまでしたと申し上げたいと思います。
また、愛媛県独自の対応をすることに着眼し、立ち上げた「えひめ愛顔(えがお)の助け合い基金」。これにつきましても、関係部署がその中身を受け止め、見事な仕上げをしていただきました。とりわけ修学旅行の招待では、東北地方から10校、1250名の高校生の皆さんをお迎えすることになり、昨年には8校が既に来県をされています。こだわりにこだわったのが、同じ時代を生きる愛媛の高校生との交流でありましたけれども、県内30校の高校に手を挙げていただきました。本当に彼らなりの見事なおもてなしを、考え抜いた揚げ句の素晴らしい交流を積み重ねてくれています。愛媛県の高校生にとりましても、人を支える価値がどれだけ重いものなのか、尊いことなのかということを学ぶ機会になったものと思っています。
さて、昨年の1年を助走期間と位置付けるならば、今年は離陸の年であります。とりわけ活性化というものを、必ず追い求めなければなりません。活性化により雇用が生まれ、経済が潤い、税収が上がり、福祉や教育の充実につながっていく、活性化はよりどころであります。幸い愛媛県は、東、中、南予に1次産業、2次産業、3次産業がほどよく配置された、バランスのとれた県であり、それぞれに非常に大きな底力を持っているのが特長であると思います。これを総合的にコーディネートし、どう補助エンジンとして売り込みをしていくのかが県政に課せられた使命であろうと思っております。すなわち、われわれは、総合ものづくりメーカー株式会社愛媛のセールスマンたる、この気概を持って、経済の活性化に向き合うことが重要であると思います。
2次産業につきましては、昨年、関係部署で取りまとめていただきました『すご技』データベースが完成いたしました。紙・パルプから造船、タオル、先端産業に至る工業製品、そしてそれらを支える技術力の高い中小企業の集団、こういったものが、これまでは地域割り、縦割りで閉じ込められていたきらいがあります。それを開放することによって、表に出てくることによって、新しいビジネスチャンスが訪れる、また、お互いを知ることによって結びつきから生まれる付加価値も新しいパワーにつながると確信をしています。私も先頭に立って、この愛媛の素晴らしい技術を積極的に対外的に出していくことに、今年1年、全力を尽くしていきたいと思います。
1次産業につきましては、改めて柑橘王国愛媛の底力を感じた1年でもありました。県が開発をしたトップブランドである「紅まどんな」の人気度も急上昇しておりますし、これから「せとか」や「カラ」、「清見」、「甘平」、あるいは「愛南ゴールド」・「美生柑(みしょうかん)」、こういった愛媛が誇るブランド品の生産が今後順次続いていきます。圧倒的な量と品質と品揃えを誇っている柑橘王国愛媛の力を大いに全国に知らしめようではありませんか。更に、愛媛の水産についても、いかに養殖というイメージを払拭するかが今年の大きな課題です。愛情を込めて手作りで育てた牛肉が肉の世界では高級ブランドになる、魚も同じであります。世界の漁獲制限の傾向あるいは安全・安心の問題を考えますと、必ずやこの養殖技術が世界に注目される時が来る、このことを信じて突き進んでいきたいと思います。
また、昨年初めて取り組んだ木材のトップセールス、これも可能性が大いにあると思っています。高級品目のヒノキの生産量全国1位はわが愛媛県です。例えば、先般、台湾へ行った時には、かつては台湾ヒノキが日本に輸入されていましたけれども、現在、台湾ではヒノキの伐採は全面禁止されていて、ヒノキが足りない、どこにあるのか苦慮しているという状況が生まれています。いわば、情報が全てであります。的確な情報をキャッチすることによって、愛媛県の物産の伸びしろが、まだまだたくさんあると思いますので、そんな感性をそれぞれの部署で磨いていただきたいと思っております。
3次産業につきましては、昨年末で「坂の上の雲」の3年間にわたるドラマ放映が終了いたしました。認知度は上がったと思いますが、今度は何をつないでいくかが問題であり、市町の連携が大きな鍵を握っていると思っています。しまなみ海道を活用した世界的なアマチュアサイクリストの聖地への飛躍、宇和島まで延伸される高速道路を活用した南予地域への誘客、特に南予につきましては「いやし博」という名前がついているように、まさに自然の宝庫と言える地域であり、それを求める昨今の日本人の心情もあるでしょう。日本のブータンのような位置付けとして大いにPRをすることによって、南予の魅力を多くの方々に伝播していく大きな1年になるのではないかとも思います。
社会資本につきましても、今申し上げました宇和島までの高速道路が今年の3月をめどに完成し、1時間10分くらいで松山と結ばれることになります。その後の道筋が見通せない状況が続いておりましたが、関係者の尽力もいただく中で、昨年末に津島道路の予算化が正式に決まりました。これまでとは違って、道はただ運ぶといった移動手段ではなく、人の命を守る、命の道路であるという位置付けで、国に対してかなり強硬に物を申してきましたけれども、ミッシングリンク解消なしに四国の高速時代の幕開けは来ません。津島道路の予算化は大きな前進であると思います。
一方で、本四架橋の出資金の問題が大きな課題になります。年間53億円もの巨額の出資金を出し続けてきた歴史があり、その総額は愛媛県単独で780億円に達しています。来年までという約束だったのですが、2年間延長が国の方針として示されました。それは筋違いであると突っぱねておりますけれども、これは今年最大のテーマになってくるのではないかと思っています。
また、昨年、全国知事会で、社会保障と税の一体改革に関するプロジェクトチームのリーダーを仰せつかりました。年末には、4回にわたって集中的に国との折衝を繰り返しましたが、当初は、「地方が行っている社会保障の単独事業はすべて無駄なものである」というような主張を国は展開していました。「冗談ではない。地方の社会保障があってこそ国全体の社会保障が成り立っているという現実をなぜ分かろうとしない」というところからのスタートでしたけれども、年末ぎりぎりで、ある程度の合意が見えました。誤解していただきたくないのですが、仮に国が消費税を上げた場合には、地方の単独事業を評価する中で、5パーセントのうち1.54パーセントは地方の配分額になるという決着をみたわけでありますけれども、私は、国との折衝では、「もし国民に負担を求めるのであれば、負担を決める側が身を削る姿勢を示さないかぎり、国民は決して聞く耳は持たない」と強く申し上げました。「民主党も自民党も、前回の選挙で約束した国会議員の定数の大幅削減、国会議員の世襲制限、身を削るという約束したことすら守られていないような状況で国民負担を求めるのは無理だ」とはっきり申し上げているところです。今後、国政がどう動いていくか分かりませんが、こうした厳しい姿勢を国政に送るのも、地方行政を担うわれわれの使命であると思います。
最後に、今年はロンドンオリンピックの年であります。県内のアスリートたちの活躍は、本当に愛媛県全体を明るくしてくれました。特に、オリンピックでは、柔道ややり投げ、トライアスロンといった分野で、十分日本代表のポジションを勝ち取るチャンスもありますので、大いにエールを送りたいと思います。また、愛媛国体もいよいよ5年後に迫ってまいりました。5年後ということは、本当に準備期間に入ったということです。今年は、市町と協力して、各種目の設備、施設の整備も進み始めると思います。体育関係の皆さんには、どうせやるなら1位を目指すということで、選手強化も視野に入ってくると思いますが、前加戸知事からも国体の引き継ぎを頼むと言われておりますので、5年後の愛媛国体の成功に向けて前進を続けていきたいと思っています。
以上、大変雑駁(ざっぱく)ではありますけれども、気のついた範囲で1年間を振り返らせていただきました。いずれにしても、愛媛の持つ底力、潜在力をわれわれは受け止め、それを信じて活性化につなげる補助エンジンたるという気持ちのもと、皆さんの潜在的な力を大いに発揮する1年にしていただけたらと願っております。そのためには、くれぐれも体調管理、健康管理に気をつけて職務に邁進していただきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げまして、年頭の御挨拶とさせていただきます。
ありがとうございました。