ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > ようこそ知事室へ > 知事の発言集 > 平成23年度 > 平成23年度新規採用職員辞令交付式知事あいさつ

本文

平成23年度新規採用職員辞令交付式知事あいさつ

ページID:0010923 更新日:2013年1月15日 印刷ページ表示

日時:平成23年4月1日(金曜日) 10時00分

場所:県庁本館4階 正庁

 

 ようこそ愛媛県へ。皆さんは今日から、社会人としての第一歩を踏み出すことになります。これから、一緒に力を合わせて愛媛県の発展のために尽力していただきますけれども、8月頃まで直接お話しする機会がありませんので、少し時間をいただいて基本的なことだけ申し上げたいと思っています。

 まず、県職員に限ることではないのですが、社会人というか人間としてのマナーで、徹底してもらいたいのが挨拶です。挨拶ができない人間は絶対に成長することができない、というのが自分のこれまでの経験則です。なかなか恥ずかしいということもあるかもしれませんが、基本である、大きな声でハキハキと挨拶をすることを、是非、身につけていただきたいと思います。

 それから、これは社会人としての経験なのですが、皆さんにとりましては第一歩となる最初の3年間はきわめて大事です。この3年間というのは、スポーツでいえば基礎をつくる時期でありますけれども、スポーツでも単調な基礎練習をいかに積み上げるか、その積み重ねを乗り越えた人たちが、その後の成長を遂げていくわけであります。それを怠った場合は、いかに才能があろうとも成長をすることはできません。

 ですから、この3年間というのは、自分が、社会人として成長していくための本当に大事な基礎的訓練の時期なんだということをしっかりと受け止めてください。ともかくも新しいことばかりだと思いますが、そんな気持ちをもって3年間、懸命にがんばっていただきたいと思います。3年間の基礎ができれば、いろいろな応用が可能になってくると思います。

 また、皆さんはそれぞれ、いろいろな勉強を積み重ねてきたと思います。それに対して自信は持ってもいいと思いますが、過信はしないでいただきたい。まだまだ知らないことがたくさんあると思います。「知識を得るための最上の手段は、己が無知だと悟ること」という言葉があります。そんな姿勢で新しい知識、あるいは経験を大いに取り入れていただきたい。

 さて、愛媛県は地方自治体であります。地方自治体は、ここ数年で取り巻く環境が大きく変わってきています。かつては、3割自治という言葉がよく言われていました。要は、あらゆる政策、福祉においても、教育においても、産業政策、環境政策においても、それぞれの分野で、ほとんどが国の省庁によって作られてきました。そして、地方自治体は、国によって作られた政策のメニューリストを見て、自分たちの地域の身の丈に合ったものをチョイスする、選択をすることを実施していたわけであります。

 このことによって、どのような現象が生じていたかというと、自分で政策立案をすることが非常に弱くなってしまい、いわばメニュー選択型の行政が地方自治体の姿でありました。これは、日本の国がずっと取ってきた制度でもあったわけです。数十年前、60年前、70年前、戦後の荒廃期から復興するときには、限られた財源をどう生かして、全国あまねく復興を遂げるかということが最大のテーマでありました。この条件を満たす制度としては、中央集権的な制度が一番好ましいであろうということで作り上げられたわけであります。しかし、これは、その時は十分に機能していたのですが、数十年の月日を経るに従い、ある程度の社会基盤が整ってまいりますと、むしろ全国あまねく一律にという姿が足かせになってきました。本来、地域は、それぞれの歴史や文化をいかに生かしていくかに、魅力づくりの鍵があるわけですけれども、それができないということを乗り越えるために地方分権が必要であると、さかんに言われるようになりました。いわば金太郎飴のような地方自治体のありようではなくて、それぞれの地域が大いに魅力を発揮していくような個性的な地域づくりへと脱皮するためには、どうしても国から地方への権限の移譲、財源の移譲が必要であることから、地方分権の必要性がここ数年大きく言われるようになったわけであります。

 一方、国は、御案内のとおり、借金が大きく膨れ上がり破綻状態にあります。国にはもう地方のメニューまで細々と作る余力はなく、これからは、すべて地方にお任せしようとする、国の財政事情という全く違った要因から地方分権を進める流れも出てきました。個性的なまちづくりを行おうというプラスの要因と、国の財政がもう駄目だというマイナスの要因、全く意味は違うのだけれども、方向性としては、地方分権で一致したわけです。

 こうした中で、地方分権が進み始めていますが、こうなるとこれまでのメニュー選択型の行政ではやっていけなくなります。メニュー選択型から政策立案型の行政体へ脱皮をしていかなければなりません。

 そこには責任と大変な試練が伴ってきます。皆さんは、このように地方自治体が大きく変わろうとしているときに愛媛県庁に入られることになりました。そのことを大いに受け止め、力を発揮していただきますよう心からお願い申し上げます。

 私が知事に就任したのは、昨年の12月ですが、それ以前は約10年間、松山市で基礎自治体の仕事をしていました。基礎自治体と県のような広域的自治体、若干、役割は違います。しかし、その根幹にかかわるところはほとんど変わりません。特に、公務員としての心構えに関しては、全く同一であろうと思います。就任以来、5つの意識改革を求めています。

 その一つは、「何故できないか」を考えるのではなくて、「どうすればできるか」という視点を持って物事を捉えて欲しいということです。ともすれば、人間というのはなぜできないかということを優先して考えてしまいますし、そこからは消極的な結論しか出てきません。常にどうすればできるかということを考え、試行を積み重ねていくと、結果としてできなかったとしても後に残るものが大きいわけです。

 二つ目は、「自治体に倒産はない」という考えを捨て、「自治体に倒産はありえる」ことを刻んでおいて欲しいと思います。数年前、北海道の夕張市が破綻をいたしました。悲惨な状況が待っていました。公務員給与は46%カット。職員は、やっていけないと半分が辞めていきました。病院の経営もできなくなりました。7つあった学校も1つに集約されました。新しい事業は一切できません。これが、倒産した自治体を待っている姿であります。是非、こうした時代に入っていることを認識して、コスト意識を持っていただきたいと思います。

 三つ目は、もう皆さんは情報化時代に生まれ育っていますから、いろんなものを駆使されていると思いますが、決して情報に振り回されることなく、情報を活用できる職員になって欲しいということであります。あふれる情報をいかに有効に仕事に役立てるかということが、非常に大きなポイントになってくると思います。

 四つ目は、「やってあげてる」という姿勢を捨て去って、「やらせていただく」、「一緒にやる」という気持ちを持っていただきたい。日本には市があって、県があって、国があってという上下関係を意識してしまいがちですけれども、それらには全く上下関係はありません。役割分担があるだけです。ですから、県民に対しても、市町村に対しても一緒にやろうという気持ちを常に持ち、「やってあげている」という上から目線は捨て去っていただきたい。

 最後に、五つ目は失敗についてであります。皆さんも初心者ですから失敗はあると思います。失敗しても全然かまいません。大切なことは、同じ失敗を繰り返さないということであります。むしろ、失敗というのは成長のチャンスだと思います。失敗をしたなら速やかにオープンにする、報告をする。お叱りを受けるでしょう。叱られたら、その時に成長の扉が開きます。要は、すぐに対処する、そして二度と起こらないようにするにはどうしたらよいか考える。そうすれば成長につながるわけであります。失敗を隠すのではなくて、失敗を報告する、積極的にオープンにする。そんな意識を持っていただきたいと思います。

 以上、大変厳しい話をしましたが、仕事はすべからく楽しくやるべきであります。今までの話は基本でありますから、それを身につけた上で、大いに前向きにやりましょう。とかく、今は非常に厳しい時代でもありますし、御案内のとおり、東日本では大変な震災が発生しています。何となく、世の中全体が暗いムードでありますが、仕事には、やらなければならないという義務感を背負った仕事とやってみたいなと思える2種類の仕事があって、そのやってみたいなと思える仕事の比率を自分の中で大きくしていけば、明るく前向きになれます。物は考えようで、昨日までやらなければならないと思っていた仕事も、ちょっと視点を変えることで、やりたい仕事、やってみたいと思えるような仕事に変えることはいくらでもできます。これは考え方次第です。昨日までは、やらなければならないと思っていたが、ちょっと待てよ、こういうふうに少し変えてみたらこんなふうに変わるのではないかと、自分の中でどんどん考えていくんですね。その繰り返しによって、自分の思いの中で、やってみたい仕事の比率を高めていくと、仕事はとてもおもしろくなってきます。

 自分のキャッチフレーズは、「みんなでつくろう、愛顔(えがお)あふれる愛媛県」です。明るく前向きにやることが、いい仕事につながると信じており、そんな思いを共有しながら、ともにがんばっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 皆さんは、今日から先輩たちの指導を受けると思いますけれども、今ちょっと非常事態でありまして、先ほどふれたように東日本大震災の応援をしなければなりません。愛媛県は、今回、幸いにも被害に遭いませんでした。被害に遭わなかったからこそやらなければならないことがある、という立場であります。今、あらゆる部署の先輩たちが被災地に入っています。医療チームあるいは学校の先生、一般職員、原子力発電所に関係する技術職員、これからは土木技術職員にも入っていただくことになると思います。それぞれの部署から地元のニーズにあった人材がどんどん現地に入っています。そんな状態ですから、県庁の中が手薄になっておりますので、皆さんには、普通の年以上に、それをカバーするという仕事も背負っていただくことになりますけれども、期待に応えてくれると信じております。大いに活躍をしてください。

 皆さんにとりまして、愛媛県が、選んでよかったなと思える職場になるように自分も努力します。一緒になって、愛媛県をつくり上げていこうではありませんか。初日に当たり、皆さんにエールの気持ちを込めて御挨拶とさせていただきます。


AIが質問にお答えします<外部リンク>