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新しい地方経済・生活環境創生会議(第1回)知事発言の要旨について(11月29日)
日時:令和6年11月29日(金曜日)11時04分~11時14分
場所:知事会議室
場所:知事会議室
(知事)
愛媛県知事の中村と申します。
先ほどから、多くの委員の皆さんのご意見、大変興味深く拝聴させていただきました。私の方からは今日、愛媛県が何をやったかというよりは、今、ほとんどの方の意見を聞きつつ、地方創生という大きな議論をしていく中で、何が必要なのかな、どういう方向がいいのかな、自分の体験に基づいて、お話をさせていただきたいと思います。
まず、冒頭に本部の方から、地方創生のこれまでの10年の歩みという簡単な経緯の説明がありました。ただ、地方創生を考えるときには、それ以前の経緯というものも非常に重要になってまいります。そこで、まずそこに触れさせていただきたいんですけども、ちなみに、戦後の日本というのは、国の方であらかたの政策を作り、そして地方はそこから選択していくという、この結果3割自治というような形で歴史が刻まれてきました。
平成10年ぐらいからだったと記憶しておりますけれども、国の財政事情の面、ある意味では後ろ向きな要因から、地方のことは、これからは地方で自ら行ってもらいたいという地方分権の議論が起こった。一方で地方では、金太郎飴のような地方づくりでは地域資源が生かせないということで、権限・財源を移譲すべきだという、地方分権の前向きな姿勢からの流れがありました。これが合致して、地方分権という流れが一気に出てきたのですけれども、これを具現化するために実行されたのが、三位一体の改革でありました。
ただこれは、方針は良かったんですけども、結果論として、地方は大変な試練に向き合わざるを得なくなりました。というのは、所得税から住民税への税源移譲、2兆4000億。一方で、補助金等のカット額が3兆6000億、都合1兆2000億円が三位一体改革の名の下に、借金の付け替えが行われたと言っても過言ではない、そんな状況でありました。
これを受けて、たちまち夕張市が破綻し、多くの自治体が苦慮したわけであります。乗り越えるために実施したのは、市町村合併であります。当時3300の自治体があって、現在1700。すなわち、それだけの首長や特別職が失職をし、かつ、地方議員が6万人から3万8000人に減少し、かつその間、地方公務員は7パーセント減、一方で、分権で仕事の減った国家公務員は2.5パーセント減、非常に矛盾を感じて試練に向き合わざるをえないというのがその実態でありました。
これが一段落した頃に、ようやく、先ほどの地方創生という言葉が10年前に生まれ、石破さんが当時、大臣に就任していただいたということであります。
この過去の流れというものを受けて地方の思いを感じながら進めていかないと、議論というか、道のりが乖離(かいり)してしまうのかなということを感じておりますので、あえて触れさせていただいた次第であります。
そしてこの10年の中でお話があったように、途中からデジタル田園都市国家構想というのが誕生し、地方創生が生まれたときには、地方創生交付金でバックアップしよう。言わば、地方の自立を促すための後押しということで交付金ができたんですが、デジタル田園都市国家構想が誕生してからは、今度はもう一つ、デジタル部分の交付金が生まれた。こういうチャートの経緯が、今日に至る流れでございます。
こういうことで、このチャートを眺めながら、今後、論じていくと、いろんな課題が見えてくるんではないかと思います。一つには、単なる地方創生交付金の増額では地方創生は成り立たない。確かに、この10年いろんな取り組みがあって、成功事例もあれば、継続中のものもあれば、失敗事例もあれば、いろんなケースがあると思います。その中で問題になってるのは、一つには、理想論としては、完全なる地方分権が理想なのですが、まだそこまでに至る段階ではない。至る段階の途中経過として、地方創生交付金があるというふうにわれわれは位置付けているんですけども、まだすべての自治体が、その裁量権のある交付金を有効に活用できる力量があるかと問われたら、まだそこまではあると言い切れる段階ではないと感じています。
全国知事会で取りまとめさせていただきました地方創生に関する提言書にも、あえて前段にこのことを触れさせていただいています。地方創生を進めていく上において、自治体のスキルアップ、これは欠かせないというふうなことは明記をさせていただいているところでございます。
それともう一つは、国の交付基準の問題。地方創生でいろんな事業を考えていくときも、現在進んでいるデジタルの技術を活用するというのは非常に多いケースなんですけども、これまた国の方ではデジタル交付金がデジ庁、そして地方創生交付金が創生本部、縦割りになっているんですね。使う側のわれわれからすれば、今回どっちの交付金使うかというだけの話なんですけども、そこの垣根というのは極めて低いんですね。ある意味では、一緒にやるべき課題が多い。しかし、この縦割りの中では、国の方でそれを横串を入れて議論する場もないし、あるいは統括して見ている人もいない。このあたりは大きな課題ではないかなというふうに感じております。
すなわち、地方では、例えばこのスキルアップをしないと、これまでの交付金でも、期限が来ると、もうなんか、使わなきゃまずい。力のないところは何があるかって言ったら、手っ取り早い商品券、あるいは地方版の給付金。でもこれは、あくまでも一過性の施策であって、長い目で見て地方の成長につながるような政策とは、少し趣旨が違うというふうに個人的には思います。だからこそ、こうしたことを回避するためにもスキルアップが必要だし、そして国の方では、やはりそれを見極めて、言わば、将来の成長の実になる政策は何なのかということを見極めて、そこを徹底的に支援するというような基準というか、見極めというか、そういう仕組みができるかどうか僕も分かりませんけども、そこを考える必要性があるのではないかというふうに思います。
もう1点は、財源の問題なのですけども、これは私が個人的に言ってるだけなので、まだ知事会の決定ではないのですけども、単に税金を使った交付金を増やすというよりは、民間資金の活用という手法をもっと考える必要があるんではないか。例えば、今、現場を預かってて、私は前半の地方創生以前は市長の仕事をさせていただきました。
市町村合併も自ら行った時期がございます。そして、後半の地方創生が出てきてからは、知事の仕事をさせていただいてますけども、財源ということに関して言うと、最近特に思うのは、都市圏にある大きな企業が、ふるさと納税を通じて、地方の政策に協力したいという申し出が本当に増えてきています。
ただ、今の税制の下では、単年度扱いになりますから、毎年毎年、いくらふるさと納税しようかというふうな議論を経て、お金を送っていただくことになりますので、長期的な視野に立った地方創生の運営ができないという状況にあります。
例えば、これを回避するためには、地方創生の基金という制度を作って、企業が収益を上げたときにはそこに基金を積んでいき、そして使ったときに損金算入ができるというような税制を少し変えるだけで、この大手の企業に蓄積しているお金を、社会貢献という意味も含めて、地方に流していくというルートができるんではないかなというふうに考えます。
地方創生、いろんな課題がありますけれども、そうした現場を体験してきた立場から、また全国知事会の立場から、いろんな提言をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それから、最後に一点だけ。先ほど吉田委員からも、県と市町の関係の問題、たしかに仕組みの問題もあるんですけど、これまでの市町村合併等々の流れもあって、そう簡単な話ではないと思うんですよ。例えば、われわれの場合、そもそもこの国に根差している、村よりも町が上、町よりも市が上、市よりも県が上、県よりも国が上、というような既成概念がどっかしら内在していると思うんですよ。これを取っ払うところを愛媛県では徹底して行っています。それから、70の市町村を20に集約した県でもありますので、市町さんとはしょっちゅう連絡して、ラインの関係もできています。県が明日こういったことを発表したいんだと流すと、意見がなかったらオッケー、オッケーと返ってくる。そして私が発表すると、各市長さん、町長さんが一斉に動き出してくれる。ちょっとした工夫、心掛けの問題や人間関係の問題で随分解決できる分野もあるんじゃないかなというふうに感じておりますので、現場を体験してきた立場から、意見を申し上げさせていただきました。以上です。
愛媛県知事の中村と申します。
先ほどから、多くの委員の皆さんのご意見、大変興味深く拝聴させていただきました。私の方からは今日、愛媛県が何をやったかというよりは、今、ほとんどの方の意見を聞きつつ、地方創生という大きな議論をしていく中で、何が必要なのかな、どういう方向がいいのかな、自分の体験に基づいて、お話をさせていただきたいと思います。
まず、冒頭に本部の方から、地方創生のこれまでの10年の歩みという簡単な経緯の説明がありました。ただ、地方創生を考えるときには、それ以前の経緯というものも非常に重要になってまいります。そこで、まずそこに触れさせていただきたいんですけども、ちなみに、戦後の日本というのは、国の方であらかたの政策を作り、そして地方はそこから選択していくという、この結果3割自治というような形で歴史が刻まれてきました。
平成10年ぐらいからだったと記憶しておりますけれども、国の財政事情の面、ある意味では後ろ向きな要因から、地方のことは、これからは地方で自ら行ってもらいたいという地方分権の議論が起こった。一方で地方では、金太郎飴のような地方づくりでは地域資源が生かせないということで、権限・財源を移譲すべきだという、地方分権の前向きな姿勢からの流れがありました。これが合致して、地方分権という流れが一気に出てきたのですけれども、これを具現化するために実行されたのが、三位一体の改革でありました。
ただこれは、方針は良かったんですけども、結果論として、地方は大変な試練に向き合わざるを得なくなりました。というのは、所得税から住民税への税源移譲、2兆4000億。一方で、補助金等のカット額が3兆6000億、都合1兆2000億円が三位一体改革の名の下に、借金の付け替えが行われたと言っても過言ではない、そんな状況でありました。
これを受けて、たちまち夕張市が破綻し、多くの自治体が苦慮したわけであります。乗り越えるために実施したのは、市町村合併であります。当時3300の自治体があって、現在1700。すなわち、それだけの首長や特別職が失職をし、かつ、地方議員が6万人から3万8000人に減少し、かつその間、地方公務員は7パーセント減、一方で、分権で仕事の減った国家公務員は2.5パーセント減、非常に矛盾を感じて試練に向き合わざるをえないというのがその実態でありました。
これが一段落した頃に、ようやく、先ほどの地方創生という言葉が10年前に生まれ、石破さんが当時、大臣に就任していただいたということであります。
この過去の流れというものを受けて地方の思いを感じながら進めていかないと、議論というか、道のりが乖離(かいり)してしまうのかなということを感じておりますので、あえて触れさせていただいた次第であります。
そしてこの10年の中でお話があったように、途中からデジタル田園都市国家構想というのが誕生し、地方創生が生まれたときには、地方創生交付金でバックアップしよう。言わば、地方の自立を促すための後押しということで交付金ができたんですが、デジタル田園都市国家構想が誕生してからは、今度はもう一つ、デジタル部分の交付金が生まれた。こういうチャートの経緯が、今日に至る流れでございます。
こういうことで、このチャートを眺めながら、今後、論じていくと、いろんな課題が見えてくるんではないかと思います。一つには、単なる地方創生交付金の増額では地方創生は成り立たない。確かに、この10年いろんな取り組みがあって、成功事例もあれば、継続中のものもあれば、失敗事例もあれば、いろんなケースがあると思います。その中で問題になってるのは、一つには、理想論としては、完全なる地方分権が理想なのですが、まだそこまでに至る段階ではない。至る段階の途中経過として、地方創生交付金があるというふうにわれわれは位置付けているんですけども、まだすべての自治体が、その裁量権のある交付金を有効に活用できる力量があるかと問われたら、まだそこまではあると言い切れる段階ではないと感じています。
全国知事会で取りまとめさせていただきました地方創生に関する提言書にも、あえて前段にこのことを触れさせていただいています。地方創生を進めていく上において、自治体のスキルアップ、これは欠かせないというふうなことは明記をさせていただいているところでございます。
それともう一つは、国の交付基準の問題。地方創生でいろんな事業を考えていくときも、現在進んでいるデジタルの技術を活用するというのは非常に多いケースなんですけども、これまた国の方ではデジタル交付金がデジ庁、そして地方創生交付金が創生本部、縦割りになっているんですね。使う側のわれわれからすれば、今回どっちの交付金使うかというだけの話なんですけども、そこの垣根というのは極めて低いんですね。ある意味では、一緒にやるべき課題が多い。しかし、この縦割りの中では、国の方でそれを横串を入れて議論する場もないし、あるいは統括して見ている人もいない。このあたりは大きな課題ではないかなというふうに感じております。
すなわち、地方では、例えばこのスキルアップをしないと、これまでの交付金でも、期限が来ると、もうなんか、使わなきゃまずい。力のないところは何があるかって言ったら、手っ取り早い商品券、あるいは地方版の給付金。でもこれは、あくまでも一過性の施策であって、長い目で見て地方の成長につながるような政策とは、少し趣旨が違うというふうに個人的には思います。だからこそ、こうしたことを回避するためにもスキルアップが必要だし、そして国の方では、やはりそれを見極めて、言わば、将来の成長の実になる政策は何なのかということを見極めて、そこを徹底的に支援するというような基準というか、見極めというか、そういう仕組みができるかどうか僕も分かりませんけども、そこを考える必要性があるのではないかというふうに思います。
もう1点は、財源の問題なのですけども、これは私が個人的に言ってるだけなので、まだ知事会の決定ではないのですけども、単に税金を使った交付金を増やすというよりは、民間資金の活用という手法をもっと考える必要があるんではないか。例えば、今、現場を預かってて、私は前半の地方創生以前は市長の仕事をさせていただきました。
市町村合併も自ら行った時期がございます。そして、後半の地方創生が出てきてからは、知事の仕事をさせていただいてますけども、財源ということに関して言うと、最近特に思うのは、都市圏にある大きな企業が、ふるさと納税を通じて、地方の政策に協力したいという申し出が本当に増えてきています。
ただ、今の税制の下では、単年度扱いになりますから、毎年毎年、いくらふるさと納税しようかというふうな議論を経て、お金を送っていただくことになりますので、長期的な視野に立った地方創生の運営ができないという状況にあります。
例えば、これを回避するためには、地方創生の基金という制度を作って、企業が収益を上げたときにはそこに基金を積んでいき、そして使ったときに損金算入ができるというような税制を少し変えるだけで、この大手の企業に蓄積しているお金を、社会貢献という意味も含めて、地方に流していくというルートができるんではないかなというふうに考えます。
地方創生、いろんな課題がありますけれども、そうした現場を体験してきた立場から、また全国知事会の立場から、いろんな提言をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それから、最後に一点だけ。先ほど吉田委員からも、県と市町の関係の問題、たしかに仕組みの問題もあるんですけど、これまでの市町村合併等々の流れもあって、そう簡単な話ではないと思うんですよ。例えば、われわれの場合、そもそもこの国に根差している、村よりも町が上、町よりも市が上、市よりも県が上、県よりも国が上、というような既成概念がどっかしら内在していると思うんですよ。これを取っ払うところを愛媛県では徹底して行っています。それから、70の市町村を20に集約した県でもありますので、市町さんとはしょっちゅう連絡して、ラインの関係もできています。県が明日こういったことを発表したいんだと流すと、意見がなかったらオッケー、オッケーと返ってくる。そして私が発表すると、各市長さん、町長さんが一斉に動き出してくれる。ちょっとした工夫、心掛けの問題や人間関係の問題で随分解決できる分野もあるんじゃないかなというふうに感じておりますので、現場を体験してきた立場から、意見を申し上げさせていただきました。以上です。
※議事録については、読みやすさや分かりやすさを考慮し、発言の趣旨等を損なわない程度に整理しております。