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関連情報(食肉検査で見られる病気)
食肉検査でみられる病気
牛 |
豚 |
食鳥 |
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牛の病気
水腫(牛)
水腫とは、筋肉組織内の大きな血管が機械的に圧迫されることにより、組織液が間隙に増加貯留している状態をいいます。股関節脱臼、関節炎等の原因で起立不能となった牛に見られます。病理学的所見は、筋肉の褪色、出血です。他に、間質の肥厚(組織液が充満することによる)がみられます(図1-1)。高度の場合は、割面から露出液が滴下します。
水腫が特定の部位に限局される場合は、部分廃棄となります。全身に及ぶものについては、全部廃棄の処分がなされます。
図1-1 水腫
図1-2 正常な割面
肝膿瘍(牛)
肝膿瘍とは、下図2-1,2-2に示すとおり、肝臓に膿瘍が形成される病気です。一見健康そうな肥育若牛でしばしば発見されます。発生原因は、第1胃炎の化膿巣が直接肝臓へ侵襲することで起こるもののほか、高脂肪、低蛋白、ビタミンE、セレニウム欠乏飼料で飼育すると、実験的に同様の病変が発生するといわれています。
下図2では、野球ボール大の被包された黄白色の膿瘍が認められます。黄白色の厚い結合織で被包され、膿瘍内にはうす緑色のチーズ様物が充満しています。肝膿瘍を確認した場合、肝臓全体の廃棄処分がなされます。
図2-1 肝膿瘍
図2-2 肝膿瘍 拡大
図2-3 正常な肝臓
鋸屑肝(牛)
鋸屑肝とは、鋸屑(のこくず)を散布したように見える病変が肝臓に見られるものをいいます。
病理学的には、多発性巣状壊死と呼び、出血を伴うものが多く見られます。発生原因は、ビタミンE、セレニウム欠乏等が疑われています。
図3-1は、出血主体の鋸屑肝、図3-2は壊死主体の鋸屑肝です。鋸屑肝を確認した場合、肝臓全体の廃棄処分がなされます。
図3-1 鋸屑肝1
図3-2 鋸屑肝2
図3-3 正常な肝臓
豚の病気
SEP(豚流行性肺炎)(豚)
SEPとは、マイコプラズマ(Mycoplasma hyopneumoniae)によって起こる豚の慢性呼吸器伝染病です。この疾病は日本全国に発生がみられ、と畜場出荷豚の45~70%に達するといわれています。SEPの病理学的所見は特異的で、肺のカタル性肺炎(図4-1)を主徴とします。内臓検査にて、肺の特異的病変を確認し本病と診断します。
SEPと診断されたものについては肺について部分廃棄の処分がされます。
図4-1肺のカタル性肺炎
図4-2正常な肺
豚丹毒(豚)
豚丹毒症とは、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)の感染によって起こる、種々な病型ををとる豚の病気です。当所では、関節の腫脹を主徴とした関節炎型の豚丹毒が認められます。この疾病の病理学的所見は、膝関節胞の絨毛の形成(図5-1)、内側腸骨リンパ節(図5-2)の腫脹等です。枝肉検査の結果、これらの所見が認められたものについて、精密検査を実施し、その結果、豚丹毒菌の検出されたものについて確定診断を行っています。
検査の結果、豚丹毒と判定されたものについては、全部廃棄されます。
図5-1 膝関節絨毛の形成
図5-2 内側腸骨リンパ節の腫脹
図5-3 正常な膝関節
図5-4 正常な内側腸骨リンパ節
AR(萎縮性鼻炎)(豚)
ARとは、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)の鼻腔感染によって起こり、SEPと並んで豚の主要な慢性呼吸器疾患の一つにあげられます。この病気の症状は特徴的で、目の下の三日月部に付着する黄・黒色の斑点(アイパッチ)の他、病勢が進行したものには「鼻曲がり」(図6-1)などが認められます。
生体検査、頭部検査の結果、これらの特異的な所見を確認し、本病と診断します。
図6-1 AR
図6-2 AR断面
図6-3 正常な鼻
鶏の病気
腹水症(鶏)
腹水症とは、腹腔内に漿液が貯まる病気です(図7-1)。原因は不明ですが、ブロイラーで冬季に多く発生します。
食鳥検査で、本病を確認した場合、全部廃棄の処分がなされます。
図7-1 腹水症
図7-2 正常な鶏
ブドウ球菌症(鶏)
ブドウ球菌症とは、ブドウ球菌(Staphylococcus)の感染によって起こる鶏の化膿性疾患の総称です。その症状により、敗血症型、内臓感染型、皮膚感染型、骨髄・関節炎型に分けられます。
下図8-1は内臓感染型(肝臓の変性壊死性炎)で、まれに発見されます。
食鳥検査で、本病と診断した場合、全部廃棄の処分がなされます。
図8-1 肝臓の変性壊死炎
図8-2 正常な肝臓