本文
槇川正木ウィンドファーム
手続状況
評価書
対象事業の区分
風力発電所の設置の工事
事業名称
槇川正木ウィンドファーム
事業規模
総出力 25,000kW(8基)
事業実施区域
宇和島市津島町槇川~愛南町正木
関係地域
宇和島市及び愛南町
事業者
槇川正木ウィンドファーム合同会社
公告・縦覧日
- 方法書公告・縦覧 平成25年3月26日~平成25年4月30日
- 準備書公告・縦覧 平成28年7月22日~平成28年8月22日
- 評価書公告・縦覧 令和4年7月29日~令和4年9月5日
知事意見
方法書
愛媛県は、槇川正木ウィンドファーム環境影響評価方法書について、環境影響評価法第10条第1項及び電気事業法第46条の7第1項の規定に基づき、経済産業大臣に対し、平成25年8月20日付けで知事意見を提出した。
知事意見
環境影響評価法(平成9年法律第81号)第10条第1項及び電気事業法(昭和39年法律第170号)第46条の7第1項の規定により、別紙のとおり標記方法書に対する意見を提出します。なお、電気事業法第46条の8第1項の規定に基づき、特定事業者に勧告をするに当たっては、本意見の趣旨が十分に勘案されますよう御配慮願います。
別紙
1. 総括事項
(1)環境影響評価を行う過程において、項目及び選定等に係る事項に新たな事情が生じた場合は、必要に応じて選定した項目及び手法等を見直すとともに、追加的に調査、予測及び評価を行うなど適切に対応すること。
(2)環境影響の予測に当たっては、できる限り定量的な手法を用いること。
(3)事業計画を詳細にしていくに当たっては、周辺の環境の保全に最大限配慮し、地域住民の理解を得ること。
(4)最近、全国的に風力発電施設の落下事故等が相次いでいるが、当該事故を未然に防止するための対策及び万が一事故が起きた場合の復旧方法並びに風力発電施設の耐用年数経過後の対応について、環境影響評価法に基づく環境影響準備書(以下「準備書」という。)において具体的に示すこと。
(5)事業実施区域周辺では、複数の風力発電事業計画が存在し、工事中及び供用後に騒音・超低周波音、景観、動植物等への影響が複合的なものになるおそれがあることから、必要に応じて周辺における風力発電事業計画を踏まえ、環境影響評価を実施すること。
(6)風力発電施設搬入に係る工事用道路として、各風車ヤードを結ぶ道路以外は、既設林道を利用する計画であるが、幅狭で曲がり角の多い既設林道の拡幅なしに巨大な風力発電施設を搬入できることを証明するため、準備書において、利用する既設林道の最少幅及び最も角度が急な箇所等について図示するなど、当該設備の搬入計画について、より詳細に記載すること。仮に拡幅工事の必要な既設林道があれば、その箇所についても事業実施区域に含め、必要な環境影響評価を実施すること。
2. 個別事項
1 大気質
建設機械の稼働に伴う窒素酸化物、粉じん及び騒音の調査地点について、土捨場に隣接して存在する民家及び祓川ふれあい広場を追加選定するとともに、必要に応じて土捨場の位置を変更するなど適切な措置を講じること。
2 騒音・超低周波音
(1)騒音・超低周波音の調査地点について直近集落を含む2地点が選定されているが、騒音・超低周波音は回折効果や地形特性により、直近民家が最もその影響を受けるとは限らないため、事業実施区域北西側の上槇下組及び事業実施区域北部の槇川地区を調査地点として追加選定するなど、調査地点を拡充すること。
(2)騒音及び超低周波音の調査時期は、強風日を含む2日間(連続)とされているが、騒音及び超低周波音の伝わり方は、地形や風向に左右され、特に風向は季節により変わりうるため、調査時期を拡充すること。
(3)騒音及び超低周波音の評価方法について、現況からの増分についても適切に評価すること。
(4)騒音(周波数が20ヘルツから100ヘルツまでの音によるものに限る。)及び超低周波音については人によって感じ方も異なるとともに、人への影響については未解明な部分も多いため、既設の風力発電施設について、特に苦情が生じている施設の事例調査により、施設の設置前後におけるそれらのデータを収集し、その結果も踏まえて予測評価すること。
(5)付近住民から苦情が発生しないよう騒音又は超低周波音を低減させる方法について検討するとともに、実際に苦情が発生した場合に検討すべき環境保全措置について、稼動制限等を含めて、準備書において具体的に示すこと。
3 振動
建設機械の稼働に伴う窒素酸化物、粉じん等及び騒音については、土捨場付近に民家が存在するため予測評価の対象とされているが、建設機械の稼働に伴う振動については対象とされていない。特段の理由がない限り、振動について項目選定し、適切に予測評価すること。
4 水環境
(1)土木工事に伴う土地改変により、みずみちが変化する可能性があり、これにより植生への影響が懸念されるため、土木工事に伴うみずみちについて、その量を含めて予測評価すること。
(2)みずみちを変化させないための措置としてU字溝を設置される計画であるが、傾斜地におけるU字溝の設置については、どれだけきれいに施工したとしても、U字溝から溢れ出た水により、それを支える土壌が侵食され、結果としてU字溝自体の安定性を欠く恐れがあるため、U字溝ではなくボックスフリュームなど、施工後においても安定性の高い設備となるよう努めること。
5 風車の影
風車の影の調査地域について、事業実施区域周辺の最寄の家屋集合地域が収まる範囲とされているが、最寄集落の近くにも集落が複数存在するため、事業実施区域周辺の集落全てが収まる範囲とし、準備書においては調査地域を示す範囲を図示すること。
6 植物
(1)土捨場への搬出ルートは、篠山県立自然公園第二種特別地域内を通過するため、特に祓川周辺において、工事関係車両の通行に伴い発生する粉じん、大気質等による植生、水質への影響について、注意して調査すること。
(2)一旦破壊された生態系の再生は極めて困難であることから、造成工事実施後においても、法面緑化には在来種を使用するなど、できるだけ実施前と同等の状態に戻すような保全措置を講じること。
7 動物
(1)猛禽類等の調査地点として2箇所選定されているが、調査範囲を広く見渡せる地点を追加選定すること。
(2)事業実施区域及びその周辺は、県内におけるサシバの主要な渡りの拠点地である高茂岬と由良半島の近くに位置し、渡りのルートに含まれていること、また、ねぐらの位置により飛翔高度が異なることにも十分留意して調査し、渡りの影響の有無について適切に予測評価すること。
(3)事業実施区域山麓の槇川北側の山地は植生、地形等クマタカにとって良好な生息環境が見られ高利用域となっており、事業実施区域周辺でクマタカの繁殖の可能性が高いという点に留意して、事業実施区域周辺におけるクマタカの飛翔ルートや生息状況等について十分に調査すること。
(4)自然と人との共生に向け、事業実施による渡り鳥及び留鳥への影響を可能な限り低減できるような風力発電施設の配列及び彩色等を検討すること。
(5)動植物の調査に当たっては、必要に応じて専門家等の意見を聴取しつつ実施するとともに、実施した場合は、専門家の専門分野及び意見聴取内容について準備書に記載すること。
8 景観
(1)景観の調査地点として、中景~遠景の5地点が選定されているが、風力発電施設の設置場所によっては、その存在自体が付近住民に多大な圧迫感を与えるおそれがあるため、少なくとも直近民家を追加選定すること。
(2)尾根沿いに風力発電施設が設置される計画であるが、事業実施区域周辺には滝も多く存在するため、山と滝により絶妙に調和された豊かな自然景観を破壊しないよう、風力発電施設の設置場所に十分留意すること。
9 人と自然との触れ合い活動の場
土捨場付近に存在する祓川ふれあい広場を、工事関係車両の通行に伴う‘人と自然との触れ合い活動の場’の調査地点として選定し、適切に予測評価するとともに、必要に応じて土捨場の位置を変更するなど適切な措置を講じること。
10 その他(文化財)
(1)埋蔵文化財について、既存資料により事業実施区域内及びその周辺には存在しないと結論づけているが、南予地域の高地集落は遺跡がたくさん発掘されている注目すべき地域であるため、埋蔵文化財の存否については、県及び関係市町の教育委員会からの意見を聴取しつつ、現地調査により把握すること。
(2)四国西南部の沿岸には、拝鷹山貝塚をはじめとして丘陵部尾根上に遺跡が存在することが知られ、高知県大月町ムクリ山遺跡においても、標高260mの丘陵上で風力発電所設置に伴い弥生時代の遺跡の発掘調査が行われているとともに、事業実施区域北側の御槇盆地では、旧石器・縄文時代の遺跡が多数存在している。このため、宇和島市において事業実施区域について踏査した結果、石器が1点採集され、遺跡の存在が示唆されたため、事業実施区域において試掘調査を実施のうえ、その存否を明らかにすること。
準備書
愛媛県は、槇川正木ウィンドファーム環境影響評価準備書について、環境影響評価法第20条第1項及び電気事業法第46条の13の規定に基づき、経済産業大臣に対し、平成28年11月18日付けで知事意見を提出した。
知事意見
環境影響評価法(平成9年法律第81号)第20条第1項及び電気事業法(昭和39年法律第170号)第46条の13の規定により、別紙のとおり標記準備書に対する意見を提出します。
電気事業法第46条の14の規定に基づき、特定事業者に勧告をするに当たっては、本意見の趣旨が十分に勘案されますよう御配慮願います。
別紙
第1 総括事項
1 地域住民による反対運動が生じていることを踏まえ、環境影響評価の手続きを進めるに当たっては、極力データを開示して、分かりやすく丁寧な説明を行うとともに、インターネットによる図書の公表方法等について、利用者に配慮した内容に見直すなど、誠意ある対応をとること。
2 事業実施区域周辺では、複数の風力発電事業計画が存在し、工事中及び供用後に騒音・超低周波音、景観、動植物等への影響が複合的なものになるおそれがあることから、可能な限り周辺の他事業者との情報共有に努め、これらの事業計画を踏まえて環境影響評価を実施するとともに、事後調査を適切に実施すること。
3 事業実施に当たっては、関係機関の理解と協力のもと、関係法令を厳守し、周辺環境に与える影響について可能な限り低減すること。また、地域住民からの要望・苦情等に対しては適切に対応すること。
第2 個別事項
1 騒音・超低周波音
(1) 騒音及び超低周波音については、人によって感じ方が異なるとともに、周辺における他の事業計画が現時点では不明確なことから、事後調査を適切な頻度及び手法で実施し、影響が確認された場合には、環境保全措置を講ずること。
(2) 施設稼動後において、地域住民から苦情が発生しないよう騒音及び超低周波音を低減させる方策について検討するとともに、実際に苦情が生じた場合に検討すべき環境保全措置について、稼動時間の調整等を含めて、環境影響評価書において具体的に示すこと。
2 水環境
本事業において、取付道路の整備や風力発電設備の設置等による大規模な改変が実施される箇所があることから、これらの改変によるみずみちの変化等が懸念される。このため、工事の実施については、切土量及び盛土量の最小化を図るとともに、可能な限り地形の改変を抑制するよう努めること。
3 風車の影
本事業においては、最寄の住宅まで2km以上の離隔があり、また風車の影にかかる時間が年間30時間かつ1日30分を超えないとして影響は回避・低減されていると評価しているが、事業区域周辺は林業が盛んであり、林業従事者が多く存在する可能性があることから、これらの作業者への風車の影の影響について、必要に応じ事後調査により確認すること。
4 動物
事業実施区域及びその周辺において、クマタカやサシバ等の希少猛禽類の飛翔が多数確認されているが、隣接して複数の風力発電事業計画が存在することから、これらの希少猛禽類のバードストライクについて、複合影響が懸念される。このため、環境保全措置について、必要に応じ専門家から意見聴取するなどして検討を行い、渡来期の稼動制限等を含めて、環境影響評価書に具体的に示すとともに、適切に事後調査を行うこと。
5 景観
事業実施区域に隣接する南予最高峰の篠山については、篠山県立自然公園及び足摺宇和海国立公園に指定されているとともに、山頂部からの眺望は四方に開け、県下有数の展望所となっている。このため、風力発電施設の設置による景観への影響が懸念されることから、眺望景観への影響について予測評価を行うとともに、その影響を極力低減するよう努めること。
6 廃棄物等
方法書段階まで、対象事業実施区域内に設置するとしていた土捨場について、特定事業許可を受けた残土処分場に変更するとしているが、今後、具体の搬出先の決定に伴い、現段階で想定されない環境影響が生じるおそれが明らかとなった場合には、適切に予測評価を行うこと。また、必要に応じ事後調査を実施すること。
7 その他
(1) 事後調査を実施した場合又は、事後調査の結果を踏まえ、追加的な環境保全措置を実施した場合は、それらの結果について公表すること。
(2) 環境影響評価に係る想定降雨量については、近年、全国各地で増加している局所豪雨の状況を踏まえ、安全性を見込んだ現実的な降雨量を想定して、関連する項目の予測評価に反映すること。
経済産業大臣勧告
方法書
槇川正木ウィンドファーム環境影響評価方法書について、環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法について勧告をする必要がないと認められるため、本日(平成25年9月4日)、電気事業法第46条の8第2項の規定に基づき、株式会社ガイアパワーに対し、その旨通知を行った。