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特定希少野生動植物一覧
愛媛県では、平成20年3月に「愛媛県野生動植物の多様性の保全に関する条例」を定めました。この条例に基づき、特に保護を図る必要がある動植物を「特定希少野生動植物」として指定しています。
- 所有者はその条例指定種を適切に取り扱う努力義務が課されます(条例第10条)
- 原則として生きている条例指定種の捕獲等が禁止されます(条例第12条)
- 条例に違反して捕獲等をされた条例指定種は、譲渡し若しくは譲受け又は引渡し若しくは引取りが有償無償を問わず禁止されます(条例第16条)
- 条例違反と判断すれば罰則規定(1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金)が適用される場合があります。(条例第43条)
特定希少野生動植物の取り扱いについては自然保護課HPを参考にしてください。
ハマビシ
主に海岸砂地に生育する1年草または越年草。茎は根元で地際に分散し、夏季に黄色の5弁花をつけます。果実には複数の棘を有しており、ヒシの実に似ていることが和名の由来です。瀬戸内海側の海岸域で広く確認されていましたが、海岸改修工事に伴う自然海岸の減少により、現在の分布域は限定的です。自生地では地元企業、小学校、自治会が協力して保護活動に取り組んでいます。
ウンラン
海岸砂地に生育する多年草。愛媛県では絶滅種とされていましたが、2006年に県内植物研究者によって再発見されました。自生地の海浜植生の優占種はハマゴウで、一部テリノハイバラが混生しています。ウンランはハマゴウの占有する低木帯内部に自生しており、打ち上げ帯では確認されていません。自生地では地元企業、小学校、自治会が協力して保護活動に取り組んでいます。
ナミキソウ
主に海岸の砂地に生育する多年草。細長い地下茎があり、茎は断面が四角になります。枝分かれし高さ10~40cm、6-9月に茎の上部の葉腋に紫色の唇形花を一方向に偏ってつけます。県内の確実な自生地は1か所のみで、占有種繁茂による日照不足や人為的かく乱によって生息環境は脆弱です。
チョウジガマズミ
南予の海岸の岩場に生育する落葉低木で、樹高3m程度。枝先の芽は裸芽で、若い枝には星状毛があります。葉は広卵形から狭楕円形で、裏面には放射状の毛があります。4月上旬-中旬に白色の花をつけ、芳香があります。自生地は海岸岩場で生息環境が脆弱です。
ミズスギナ
ため池等の止水域を主な生育環境とする多年生の沈水・抽水・湿生植物。茎は円柱状で各節に5-12枚の葉が輪生します。茎が水面に達すると気中まで伸長し抽水形となります。さらに水位が下がった場合は陸生形となります。環境の変化に対して多様な形態に変化し、他の水草が生息できない水位変化が激しい水際を生息域としますが、乾燥には弱い種です。全国的に自生地が少ない種で県内での分布域は限定的です。
デンジソウ
水田、水路、池沼などの水辺に生育する多年生の抽水・浮葉・湿生植物。水田雑草でしたが、湿田の減少と除草剤の影響により全国的に減少しています。本種と類似した園芸品種が流通しており、判別が困難です。県内では1950年代には各地で確認される普通種であったと考えられていますが、現在の自生地は局所的です。
ミズキンバイ
湖沼やため池、河川、水路等に生育する多年生の浮葉・抽水植物。地下茎で広がり、葉には光沢があります。6-9月に5-6枚の花弁を持った黄色い花をつけます。全国の自生地も少なく、県内の確実な自生地は1か所のみです。乾燥化や水質悪化により生息環境が脆弱となっています。一方、園芸栽培用に流通している由来不明の個体もあり、野外に逸脱した場合は国内外来種問題を引き起こしてしまう恐れもあります。
サギソウ
日当たりのよい湿地に自生する多年生草本。日本では本州から九州に分布し、7-8月にシラサギに似た白い花を咲かせます。球根(塊茎)で増殖します。種子繁殖も行いますが、菌根菌との共生が必要です。湿地の開発や乾燥化、アシやクマザサなどの侵入による日照不足、園芸採取によって全国的に自生地が減少しており、県内での確実な自生地は限定的です。
トキワバイカツツジ
渓流沿いの林内や林縁に生育する常緑低木で1980年代に新種として記録されました。近縁種は中国、台湾等に生育していますが、本種は地理的にも隔離されており、国内での自生地は愛媛県の一部のみとなっています。4月下旬-5月上旬に芳香のある淡紅紫色の花をつけ、園芸的価値も高いことから盗掘による個体数の減少と、自生地の遷移による光条件の悪化により絶滅が危惧されています。
クマガイソウ
林床に生育する多年草。上部2枚の葉は扇状に広がります。4-5月に袋状の唇弁を持った花をつけ、園芸的価値が高いことから愛好家による盗掘が個体数減少の主な要因となっています。
シコクフクジュソウ
落葉樹林内に生育する多年草。3-4月に20-30枚の黄色の花弁を持つ3-4cmの花をつけ、園芸的価値が高いことから愛好家による盗掘が個体数減少の主な要因となっています。
シコクカッコソウ
標高500m以上の日当たりのよい広葉樹林床に生育する多年草。関東地方北部に自生するカッコソウの変種で、四国にのみ自生しています。園芸的価値が高いことから愛好家による盗掘が個体数減少の主な要因となっています。
ゲイヨサンショウウオ
全長約12cm前後。背面は緑褐色で黒褐色の斑点が散在し、腹面は淡色。幼生は黄褐色で黒褐色の斑点が散在します。卵嚢の多くはコイル状です。丘陵地の林床や草地に生息し、早春に水田の溝や用水路等に産卵します。近年の研究成果により、アキショウウオが細分化され、愛媛県の個体はゲイヨサンショウウオとなりました。愛媛県に生息するサンショウウオのなかで唯一止水性のサンショウウオで、生息場所である里山は人為的影響を受けやすいことから、絶滅が危惧されています。
ナゴヤダルマガエル
近年の研究成果によりダルマガエルはナゴヤダルマガエルとして整理されました。同じナゴヤダルマガエルでも愛知周辺の個体と岡山周辺の個体は鳴き声が大きく異なっており、従来から瀬戸内海周辺のダルマガエルは岡山種族と呼ばれていました。愛媛県では伯方島と大三島でのみ分布が確認されていますが、近年の確実な生息情報はありません。同じ場所に生息するトノサマガエルとは形態、生態共に大きな差があり、棲み分けをしていましたが、現状では完全な棲み分けが困難になっています。
ハッチョウトンボ
全長18mm前後。日本産トンボ類中最小の種で、♂の体は紅赤色、♀は黄色で胸部に黒い紋があります。湿地に生息し、成虫は6~9月にかけて発生し、幼虫で越冬します。現在の確実な県内生息地点は1か所のみです。年間を通じて浅い水深の湿地環境が必要です。開発による生息地の環境改変や、湿地の乾燥化が存続を脅かす要因となっています。
ヤリタナゴ
全長約10cmのコイ科タナゴ亜科に属する魚類で、タナゴ類の共通の特徴として、二枚貝を産卵床として利用し、オスは繁殖期に体色が婚姻色に変化します。愛媛県では松山平野南部の河川等に生息しています。県内には本種の他に国内移入種の可能性が高いアブラボテと外来種のタイリクバラタナゴの計3種のタナゴ類が同所的に生息しています。ヤリタナゴとアブラボテの雑種は累代稔性があるとされ、ヤリタナゴに対して不可逆的な遺伝子攪乱が懸念されています。
ヒナイシドジョウ
オス全長6cm、メス8cm未満のイシドジョウ属に属する魚類で、河川上流域から中流域の礫層が発達する淵尻を中心に生息しています。かつてはイシドジョウと同種とみなされていましたが、近年の研究成果により独立した種として記載されました。愛媛県では中予、南予の河川に生息していますが、止水域では確認されていません。本種は生活史の殆どを礫の間隙中で行うと考えられており、間隙水が豊富で,細粒堆積物が少なく、中礫の構成割合が高い河床の存在が個体群の維持に重要です。河川工事に伴う生息域の分断化や、細粒堆積物による礫間の目詰まりなどが、本種の生息に負の影響を与えています。
チュウガタスジシマドジョウ
ナミスジシマドジョウの基亜種で,かつてスジシマドジョウ中型種と称されていました。典型的なドジョウ体形で、水路や河川に生じた一時的な湿地等の浅い水域に移動して産卵することが報告されています。愛媛県では中予地域の2河川で分布が確認されていますが、そのうち1河川では30年以上確認されていません。河川と一時的水域を移動して繁殖する生活史を持つことから、河川周辺に移動可能で多様な水環境を必要としますが、近年の河川浚渫や横断構造物の設置により、生息環境が脆弱となっています。
ヌマムツ
全長10-15cmのコイ科の淡水魚で、県下に広く分布するカワムツに外観が似ていますが、腹鰭が朱色を帯び、側線鱗数や臀鰭条数等に差異があります。カワムツよりも止水域を好みます。愛媛県では東予地域の2河川で分布が確認されていますが、両河川共に河川延長5km未満の小河川で、河川に形成される小規模な淵を主な生息地としています。2河川のうち、1河川では2013年以降、生息個体が確認されていません。両河川共に人工構造物により流域が細かく分断されており、護岸工事等の流域開発も継続していることから生息環境が脆弱かつ不安定となっています。
カジカ中卵型
全長15cm程度。両側回遊性で、成魚は淡水の冷水域を好みますが、孵化仔魚は海に下り河口沿岸等で浮遊生活を経て河川に遡上します。同じカジカ種群として四国には河川陸封性のカジカ大卵型や、両側回遊性のカジカ小卵型の記録があります。肱川の郷土料理である「かじか料理」は本種ではなく、ヨシノボリ類を用いています。愛媛県では瀬戸内海流入河川の数河川で生息していますが、産卵場所として利用している間隙の大きい礫間が細粒堆積物で埋まったり、構造物による回遊経路の阻害により、生息環境が脆弱となっています。
マツカサガイ
殻長6-8cm、殻高4cm程度の楕円状の淡水二枚貝です。本種はメスが受精卵を鰓内でグロキディウム幼生になるまで保育します。特定希少野生動植物に指定されているヤリタナゴは、本種を含む淡水二枚貝を産卵床として利用しています。イシガイ類の減少や絶滅は、共存種や一方的絶対共生種との複雑なネットワークが阻害されることで連鎖的に多くの種を絶滅させる要因となります。愛媛県では松山平野南部の小河川に局所的に生息しています。本種の生育と繁殖にはシルトの少ない砂底が必要ですが、泥の堆積により好適な生息環境が減少しています。またグロキディウム幼生が寄生したヨシノボリ類の河川内の移動が人工構造物により制限されており、特に上流域での減少が顕著です。1990年代に本種の生息状況を調査した結果と比較して、近年は分布域が90%減少し、個体密度は99%以上減少しています(愛媛大学調査)。また、殻長5cm以下の個体が確認されないことから過去10年程度は再生産が行われておらず危機的な状況です。
イシガイ
殻長6cm程度、殻高3cm程度の楕円状の淡水二枚貝です。本種はメスが受精卵を鰓内でグロキディウム幼生になるまで保育します。特定希少野生動植物に指定されているヤリタナゴは、本種を含む淡水二枚貝を産卵床として利用しています。イシガイ類の減少や絶滅は、共存種や一方的絶対共生種との複雑なネットワークが阻害されることで連鎖的に多くの種を絶滅させる要因となります。愛媛県では松山平野南部の小河川に局所的に生息しています。本種の生育と繁殖にはシルトの少ない砂底が必要ですが、泥の堆積により好適な生息環境が減少しています。1990年代は流域内に広く分布が確認されていましたが、近年は数個体が確認されたのみで、地域絶滅危険度は同じイシガイ類のマツカサガイよりも高いといえます。