本文
労働相談事例集(四国四県労働委員会)
コーナー設置趣旨、労働委員会のあっせん制度紹介
四国の各労働委員会では、個々の労働者と使用者との間に生じたさまざまな労使紛争について相談をお受けしています。
この度、最近寄せられた相談などを参考に職場でよく起こりがちな事例を中心に、四県の労働委員会が連携して、「労働相談事例集」の作成に取り組むことになりました。
今後掲載数を順次増やして充実してまいりたいと思いますので、ご活用ください。(平成23年10月)
また、労働委員会には労働問題に詳しい委員が労使の間に入り、公正中立的な立場から紛争の解決を目指す「あっせん制度」もあります。
無料で利用できますので、労使の話し合いがこじれたりするなど自主的な解決が困難な場合は、ご遠慮なく労働委員会にご相談ください。
よくある質問について、Q&A方式で説明します。
※質問・解答について、詳しく知りたい場合は、労働相談事例集をご覧ください。
賃金未払い(高知県労委)
退職したのに、賃金と退職金を払ってもらえません。
労働者が退職した際、使用者は、所定の支払日前でも労働者が請求した日から7日以内に賃金を支払わなければなりません(労働基準法第23条第1項)。
退職金は就業規則などで定められている期日の支払いになります(同法第89 条第3号の2)。
時間外手当(愛媛県労委)
上司の指示で夜間や休日に働いたのに、残業代(時間外手当)が一部しか支給されません。
労働基準法の法定労働時間を超えて労働(残業)した場合には、残業時間に応じた割増賃金を請求することができます(労働基準法第37条)。
割増率は、実際に労働した日や時間帯によって異なります。
解雇予告手続き(愛媛県労委)
突然、会社から解雇すると言い渡されました。何か保障はありませんか。
労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に解雇予告をしなければなりません。
30日前までに解雇の予告をしない場合には、予告に代えて、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。(労働基準法第20条)
退職(高知県労委)
就業規則では、退職願の承諾が必要と言われました。退職手続はどうなりますか。
雇用期間の定めのない労働者(正社員)の退職方法には、二つあります。
退職願は、合意による契約の解除の申入れです。この場合、労働者と使用者とが合意すれば、原則、いつでも退職できます。
退職届は、労働者の一方的意思表示による契約の解除の申入れです。退職日の2週間前までに、使用者に退職届を提出すると、使用者の承諾の有無にかかわらず、退職できます(民法第627条1項)。
退職勧奨(愛媛県労委)
突然、会社の経営が苦しいので辞めてくれないかと持ち掛けられました。
使用者が労働者に退職を勧めることを、退職勧奨といいます。労働契約の合意解約の申込などと考えられるので、退職するか否かは、労働者が自由に意思決定できます。
退職するつもりがないのであれば、応じる義務はありません。
整理解雇(高知県労委)
会社の業績が悪いので辞めてもらうと言い渡されました。
使用者による労働契約の一方的な解約を解雇といいますが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利の濫用として無効となります(労働契約法第16条)。
自由に解雇できるわけではありません。
パワハラ(徳島県労委)
上司からのパワハラにどう対処したらいいのかわかりません。
職場におけるパワーハラスメントとは、職場において行われる、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものをいい、(1)身体的・精神的な攻撃、(2)人間関係からの切り離し、(3)過大・過小な要求、(4)個の侵害 などの類型があります。
使用者には、令和2年6月1日から(中小企業は令和4年4月1日から)、相談体制の整備、被害を受けた労働者へのケアや再発防止等が義務づけられています。
一人で抱え込まないで、信頼できる同僚などに相談することが大事です。
職場の人間関係(愛媛県労委)
グループで仕事をしていますが、同僚から文句を言われ、仲間外しにされています。
いわゆるパワハラかどうかは、その状況や程度、頻度などにもよりますが、使用者に相談して、何らかの対応を求めることが考えられます。
使用者には、労働者が仕事を行う上で生命、身体、健康を守るよう配慮する義務(安全配慮義務)や、快適な職場環境を形成するように努める義務(職場環境配慮義務)などがあります。
労働条件の明示(香川県労委)
労働契約書などの書面をもらっていません。
契約締結時に使用者が労働者に明示すべき労働条件の事項と明示方法は法律で定められています(労働基準法第15 条第1項)。
たとえば、契約期間、就業場所、業務、始業・終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、賃金などに関する事項は、原則、書面を交付して明示しなければなりません。
労働条件の不利益変更について(香川県労委)
突然、経営が著しく悪化したので、賃金を10%カットしたいと言われました。
賃金は、重要な労働条件の一つとして、労働契約等で定められています。一度決まった労働条件は、契約当事者である労働者と使用者との合意により決定されるもので(労働契約法第3条)、変更は原則、合意によることが必要です(同法第8条)。労働者の同意なく、労働条件を一方的に不利益に変更することはできません。
有期雇用者の退職について(香川県労委)
1年間の契約で現在の会社に勤めていますが、もっと良い条件の会社が見つかったので早く退職をしたいと思っています。
契約期間の定めがある場合、使用者と労働者は互いに契約期間を誠実に守る義務があります。
使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、解雇できませんが、一方で、労働者も、やむを得ない事由があるか、使用者が合意しないと期間途中で退職することはできません。(民法628条)
その他(愛媛県労委)
新型コロナウイルス感染症関係の休業等の取扱いはどうしたらいいですか。
厚生労働省のQ&Aを参考にして下さい。
労働相談・あっせんのお問い合わせ先
愛媛県労働委員会事務局(089-)912-2996