本文
平成23年度3月知事定例記者会見(3月21日)の要旨
日時 平成24年3月21日 11時39分
場所 知事会議室
(NHK(幹事社))
東日本大震災の発生から1年間、愛媛県や県内20市町をはじめ、全国の自治体が被災地や被災者への支援を続けてきた。しかしながら、復興の見通しは立っておらず、今後も国を挙げた息の長い支援が必要と見られるが、あらためて、震災から1年を迎えての所感はどうか。また、今後、県としてどのような支援に取り組む必要があると考えるか。
(知事)
先日、震災から1年という3月11日を迎えましたけれども、あらためて、1万9千人もの方々が尊い命を失われる、あるいは行方不明のままになっているということでございますので、本当に心からご冥福をお祈りさせていただきたいと思います。また一方で、34万人もの方々が、今もなお、避難所生活を送られているという現実があるわけでありまして、その皆さん方に対しても、心からお見舞いを申し上げたいと思います。
あっという間の1年だったようにも思うんですけれども、この震災により被害がなかった立場として、同じ日本人としての精一杯の支援をしなければならないということ、それから、もう一つは、今回の震災を受けて、これまでの愛媛県の防災対策というのを根本から見つめ直すという、この二つのテーマに向き合った1年ではなかったかなと思っています。
とりわけ、震災発生直後は、物資の提供、人的支援というものに取り組んできたわけでありますけれども、こういうときは組織として、努めて冷静に事態に向き合うこと、それから、組織全体で統一的な戦略を共有して動くということ、この二つが最も重要であると考えておりました。ですから、初期段階で、物の支援についても、短期・中期・長期での取り組み、そして、人的支援についても、救出、救命、復旧、復興という短期・中期・長期での取り組み、かつ、可能な限り総合力を発揮するということで、市町との連携、チーム愛媛としての取り組み、これを基本戦略の中に据えさせていただきました。このことにつきましては、県内の自治体との連携も初めてのことでありましたけれども、機能いたしまして、今後、同様なことが起こらないに越したことはないですけれども、ひょっとしたら、県内での実際の災害対応についても、こうした取り組みの経験は生きていくのではないかなと思っております。結果的には、本県から2千人を超える職員等が現地入りをしました。先ほど申し上げましたように、チーム愛媛でやったことによりまして、小さな町の自治体にも支援経験者が存在していますので、そうした経験が、それぞれの地方自治体に帰ったときに、町も含めた防災関係の業務に大きな力を発揮してくれるのでは、その経験がですね、プラスの方で作用してくれるのではなかろうかと思っています。また、被災地の3県からは、引き続き、支援の継続を求められています。先ほど申し上げましたように、長期派遣になりますので、厳しい人員状況でありますけれども、各県のニーズに応じまして、来年度も引き続き、被災地への職員派遣に可能な限り取り組んでいきたいと思っています。
それから、テレビのニュースから発案した「えひめ愛顔の助け合い基金」、これにつきましては、多くの県民の皆さんにその思いを認めていただきまして、予想以上にお気持ちを寄せていただきました。そのお気持ちによりまして、修学旅行をあきらめていた10校、約1,200名の高校生をお迎えすることができました。特に、何といっても心から拍手を送りたいのが、地元の愛媛県の高校生たちの交流事業であります。同世代の人間として、励まそう、勇気付けよう、そういう気持ちを持って、温かくもてなしてくれた愛媛県の高校生たちの行動に対しましては、本当に心から敬意と拍手を送りたいと思っています。これで新たな絆も生まれましたので、今回の交流が一過性のものに終わることなく、インターネット等を通じて、今後も学校間の交流というものがずっと続いていくのではないかなと思っています。
それから、がれきの処理につきましては、先般、宮城県を訪問しましたけれども、本当に膨大ながれきが残っています。確かに市町村単位で、自分のところでやろうという意思を持ったところもあれば、とてもじゃないけれども処理しきれないところもあれば、いろいろな思いがあるんですね。その膨大な量からすれば、最終的に現地だけで処理できる量をはるかに超えています。ですから、これはもう、国が広域的な対応というものを踏まえて、安全性に対してしっかりとした基準、姿勢を打ち出して、積極的に全国に説明をしたり、呼びかけをする中で、われわれも当然、そういう前提で受け入れたいと思っていますので、そんなふうな形から、同じ日本人として、安全が確保できたものについては、できれば、県民の皆さんのご了解の下に、同じ日本人として力を貸してあげたいなと思っています。ただ、これは一般廃棄物になりますので、事業を執行するのは市町になってきます。県がというだけではできません。今回、国の方から依頼のメッセージがきていますので、それを受けて、市町でもいろいろな議論をしていただきたいなと思っています。
ことほど左様にいろいろなことがありましたけれども、まだまだ復興の途上でございますから、2月10日に復興庁が設置されましたので、こうしたような国の情報、対応の中で、果たすべき役割があれば、引き続き精一杯、応援をしていきたいと思います。
以上です。
(愛媛新聞)
先般、宮城県知事と会ったときに、がれきの処理についての話があったか。
(知事)
先ほど申し上げましたように、市町によって取り組み姿勢が違うんですよね。例えば仙台市は、どちらかといえば、自前でやるという方針で動いているんですけれども、なぜかというと、仙台市は体力がありますし、被災しているのが海岸部だけで、内側の方は今までどおりなんですよ。今、地理的な要因もあって、多くの人たちが拠点として仙台に宿泊したり、そこを拠点に活動される方が多いので、街全体は、仙台市の市内だけは非常に活気を呈しています。仙台市は財政力もありますから、仙台市は自前でなんとかするというような市長の方針らしいんですけれども、ところが、仙台市以外は非常に悲惨な状況でありますから、とてもそういったものを処理できる状況ではなく、ともかく量が膨大なんですね。特に宮城県が、がれきの量が一番多いですから、そういう意味では、あらためて、可能なものについてであれば、お引き受けできないかなという個人的な思いを強くいたしました。
(愛媛新聞)
政府からの要請文書に対して、今のところ、どういう回答をするのか。
(知事)
いや、まだ、一昨日きたばかりですから、これから考えます。
(愛媛新聞)
県から市町へ照会する形になるのか。
(知事)
そうですね、国からこういう要請がきているので議論してほしいという形です。
(南海放送)
市町ごとに受け入れられるとか、どのくらいの処理能力があるとか、具体的に聞き取って、県でまとめて回答する形になるのか。
(知事)
基本的な姿勢だと思うんですね。いろいろな意見があると思いますから、その中でどうなるのかなと。それを受けて、国の方がぜひ説明会をやらせてほしいということになるかもしれないし、要はそこなんですよね。今のこの文書が、本当に気になる文書なんですよ。こんな文書が書いてあるんですね。「管下の市町村に対する国からの説明の機会を設けることが可能である」と。この姿勢ではだめなんですよ。この文書は、僕は打ち返しするつもりです。むしろ、国から積極的に説明させていただきたいというくらいの姿勢がなぜ出せないのかなと思います。
(読売新聞)
がれきの処理について、他県などでは、国を待たずに独自で検査をしたり、受け入れの基準を設けたりという動きがあるが、そのようなリーダーシップを取るつもりはあるか。
(知事)
今のところは考えていません。ただし、極めて積極的に受け入れたい、要件が整ったら受け入れたいという姿勢は何ら変わることはないです。
(読売新聞)
今のところ考えていないのはどうしてか。
(知事)
僕は、この問題については、国がやろうと思ったらすぐできることだと思っていますから、そこをまずやるのが国の仕事じゃないかということで、安全基準の問題、測定の問題、そこさえクリアすればみんな動けるんですよ。だから、その責任を回避させてはいけないと個人的には思っています。
(共同通信)
知事は、がれきの処理の安全性について国が責任を持つべきと述べている。現時点では、市町は住民に対して、何かしらの説明責任があると思うが、住民に説明できるだけの安全性の説明は、国からはないという認識か。
(知事)
そうです。国から住民説明会にどんどん出てこないといけないということですよね。というのは、私どもは、現地のつまびらかな情報は持ってないんですよ。ですから、そこら辺を持っている国がちゃんと説明してくれないとですね、不安感というのは払拭できないんじゃないのかなと思います。
(愛媛新聞)
先般、県内の経済界から伊方原発1、2号機の廃炉であるとか、3号機は安全性を確認してという意見表明があったが、どのように考えているか。
(知事)
いろいろな意見があるように聞いていますけれども、原発というのも、どの原発でもいずれは廃炉になる、これは当然のことだと思います。それが、どのぐらいで廃炉にするのかということで、いろいろな意見があると思うので、それは一つのご意見かなというふうには思います。
(愛媛新聞)
国の安全審査が大詰めになってきているが、今のところ、どう見ているか。
(知事)
国会が混乱していますので、組織がどうなるのか、また、その中で審査をする委員の皆さんがどうなるのか、この辺がよくわからないんですね。ですから、これは本当にしっかりと体制を取って、しっかりと作業を進めていただかないといけないと強く感じています。
(愛媛新聞)
知事が再稼動の総合判断するときの地元の同意は、伊方町を念頭に置いていると思うが、県議会でも、地元というのは何かという質問があった。国が判断するときには、半径10キロにするというような報道もあったが、地元というのは何だと考えるか。
(知事)
その線引きというのは、本当に難しいと思うんですが、別に伊方限定というわけではなくて、その周辺などもいろいろな意見がありますから、それらも含めて総合的に判断するということになります。
(日本経済新聞)
先ほどの廃炉の発言をしたのは、愛媛県経済界の中心的な人物の愛媛県商工会議所連合会の白石会頭ということで、個人的な意見とはいえ、それなりの重みを持っていると思うが、経済界のトップが発言したということについてどう感じたか。
(知事)
それぞれ考え方があっていいと思いますけどね。あくまでも個人的ということですし。いろいろな情報も不足する中で、最初の(発言の)後に四電さんが説明に来られたんですかね。それによって、こういうことだったのかというので、僕もつまびらかに見ていないので、例えば、30年が40年というのも一つの選択肢かなという考え方になったり、要は、正確な情報によって、いろいろな思いというのは少しずつ変わっていく可能性はあると思いますので、その辺は冷静に見ていますけども。
(愛媛新聞)
国政では早期の話し合い解散について取りざたされているが、どのように考えるか。
(知事)
それは国政のことですから分かりませんけれども、おそらく一般の感覚からすると、もう本当に、かけ離れたやり取りをやっていると思いますね。今、原発の再稼動の問題がどうなるか分かりません。日本の夏の電力の供給問題に直結しますので、この問題も目の前に横たわっていますし。それから何よりも復興支援というものが最大のテーマ、がれき処理も含めてですね、あるわけですよ。優先順位は何なのかということが、国会議員の皆さん、見えなくなっているのかなと思いますね。今は、もうそんな政局じゃなくて、しっかりと今やらなければいけないことに与党・野党も協力して結果を出していくと、一つずつ、それを多くの国民は求めているんじゃないかなと思いますので。そういう議論が全く見えない中で、やれ解散だとか、やれ委員会拒否だとか、すごく虚しくなってきますね。地方行政というのは止まるわけにはいかないんですよ。だから、動いていってほしいなと思いますね。
(愛媛新聞)
結果を出す手段としての大連立については、どのように思うか。
(知事)
これは一般論的で、僕もそれに入ると思うんですけど、やはり民主党の組織的な運営の2年間にわたる脆弱性、それから自民党の古い体質、やはり、どっちもどうなんだろうというのが、昨日の全国紙の世論調査にも見事に表れていたと思うんですね。だから、もう政治家も組織にいた方が有利だとか不利だとか、そういうところを超えてですね、1回、本当の意味での政策や理念で固まっていく政界再編を真剣に考えるべきときが来ているんじゃないかなと個人的には思います。ただし、それは選挙区事情とか、自己保身とか、そういうものが足かせになって行動が起こせないという状態なのかなと思っています。
(朝日新聞)
がれきの処理について、知事は、国が安全性をしっかりと説明すれば受け入れる意思があると受け取っている。原発の再稼動については、地元の理解があるのは承知した上で、国が安全性を説明して責任を取るということをしっかりとすれば、知事として再稼動はあるか。
(知事)
いや、まだその時点では分かりません。僕自身がやらなきゃいけないこともあったわけですよね。それは電力事業に対する四電の姿勢をしっかり県民の皆さんに分かりやすく見せていく。要は、いろいろな要求を突き付けてですね、それに対して、四電がどう答えていくのか。これは大事なことだと思いましたので、この1年間それをやり続けてきたつもりです。それとは別次元で、本当の責任者、僕が四電に対して要請したのは、国が言っていないこと、国の基準を上回ること、これを積極的にやるのかやらないのかというテーマを突き付けたつもりなんですね。ですから、それに対して、電力会社がこういう姿勢を持った、四国の場合、それで国がこういうふうなことで経過をチェックをして安全性を確認して責任を負った、この二つの要因がそろったときに、それを、さあここまで持ってきていますけどどうでしょうかねというのを、皆さんで議論していただくということになります。
(朝日新聞)
国がストレステストなどで安全性を保障しますと言っても、なお上乗せをするというのは、国がどれだけ安全性を保障しても、なお信用できないという考えが根底にあるのではないか。
(知事)
そうですね、やはり近いところにいればこそ、分かることもありますので、そういう意味で、信頼うんぬんという以上に、自分で気付いたこと、自分自身も県民の安全を守る立場の仕事を負っていますから、自分の尺度で必要なものについて気付いたものは、国に関係なくですね、突き付けていくということが重要な仕事だと思っています。
(毎日新聞)
被災地支援に関して、公営住宅以外の民間賃貸住宅の借り上げ制度を被災避難者の団体が求めている。愛媛県にはまだそういう制度はないが、今後、検討する考えはあるか。
(知事)
今のところは考えてないです。公営住宅もだいぶ空いていますので、そういうものをぜひ、活用していただけたらということです。民間からの善意の住宅もあります。
(読売新聞)
大阪市の顧問が、福島の事故を防げなかった保安院が審査をして、素人が政治判断をするという国の審査過程自体が信用できないという発言をしている。また、安全委員会の斑目委員長が伊方原発の審査をしないと発言するなど、審査過程が混乱しているが、そのような審査自体に信頼が置けると考えるか。
(知事)
分かりません。それはもう本当に、結局ですね、国の政局が余計に混乱に拍車をかけているわけですよね。だから今ちゃんと体制を取らなければいけないんだけど、これをある意味では、国会の中での混乱の要因にしてしまっているわけですから、もうそんなことよりも、ちゃんとやってくれと。こっちから言えるのはそれだけなんですよ。ちゃんと体制を作って、しっかりとした作業をしてくださいというようなことしか言えませんよね。
(愛媛新聞)
再稼働に関して、規制庁ができてから、国からの要請がないとという思いか。それとも、規制庁うんぬんではなくて、国の要請がきて、そこに納得がいく答えがあるようなら検討するのか、その辺はどうか。
(知事)
それは、前からずっと申し上げていたんですけど、今度動くときというのは、国から再稼働要請がきたときなんですよ。だから、最終的に国、政府がどう判断するかによって決まりますので、どういう形の中で決断されるのかというのは、僕も分かりませんから、そのときに判断することだと思いますので。
(愛媛新聞)
来年度予定されている県内の市長・町長の首長選に臨むスタンスはどうか。
(知事)
これは、人の道に基づいて個人的に行動をしたいと思っています。
(愛媛新聞)
応援を受けたところにお返しというイメージか。
(知事)
もうずっと一緒に今年1年仕事してきてますから、特に、チーム愛媛の連携とかですね、だから、そういうふうなことをありのままに、真実をその地域の有権者にお伝えするというのは、自分の恩返しになるのではないかなと思っています。