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第3次愛媛県自殺対策計画(案)の概要
第1章 計画策定の趣旨
- 平成18年に自殺対策基本法が施行され、国を挙げて自殺対策が総合的に推進された結果、年間の自殺者数は減少傾向にあり、本県でも、ピークであった平成10年の395人から令和5年には225人に減少したものの、人口10万人あたりの自殺者数を示す自殺死亡率は17.6と第2次計画の目標である自殺死亡率12.8 以下を上回っている状況。
- 毎年200人以上の県民の尊い命が自殺により失われている現状であり、特に10歳代から30歳代の若い世代では自殺が死因の第一位となっていることに加え、女性の自殺死亡率の増加、中年期及び高齢期の自殺者の増加など依然として多くの課題が残されており、このような現状を踏まえ第3次計画を策定。
第2章 本県の自殺の現状
令和元年から令和5年の5年間の各種データから認められた「対策を優先すべき対象群と課題」は以下のとおり。
(1)20歳未満の学校問題や家庭問題
- 学校の各段階等のライフステージや、学校や社会とのつながりの有無等の立場ごとに置かれている状況は異なっており、自殺に追い込まれる事情も異なっている。
(2)20歳代から50歳代を中心とした勤務問題及び経済・生活問題
- 他の年齢層と比べて勤務問題や経済・生活問題が大きな要因。
- 過労などからうつ病になることも多く、健康問題が潜在的に含まれている可能性がある。
(3)60歳代以降の健康問題(孤立等の問題含む)
- 60歳代以降では健康問題が大きな要因。
- 現役を引退し新たなライフステージを迎え、悩みも変化するとともに、現役引退による喪失感や周りからの孤立、老々介護などの諸問題も顕在化。
(4)あらゆる世代における「心の健康」問題
- うつ病が原因となっている自殺者数は、全ての年代で多い。
- うつ病以外の統合失調症やアルコール健康障害(依存症)、他の精神疾患による自殺者も少なくない状況にある。
(5)自殺未遂者の再度の自殺企図の問題
- 自殺者数のうち「自殺未遂歴あり」の人は自殺者全体のうち約20%に当たり、自殺未遂者は、再び自殺を図る危険性が高い。
(6)女性の抱える問題(新規)
- 女性の抱える問題が多様化、複雑化、複合化しており、女性の自殺者数は近年増加傾向。
- 妊産婦への支援をはじめ、困難な問題を抱える女性への支援等、女性特有の視点を踏まえた対策を推進していく必要がある。
第3章 これまでの取組と評価
本県では、平成23年度に地域自殺対策推進センターを設置するとともに、平成29年3月に第1次計画を、令和2年3月に第2次計画を策定し、幅広い世代に対して様々なリスク要因に対する取組を強化してきたが、令和2年からの新型コロナウイルス感染症拡大による社会の孤立、疾病の悪化、収入の減少、失業・倒産などの自殺の要因となり得る様々な問題が悪化したことなどから、令和5年の自殺死亡率は17.6となり、目標としていた数値である自殺死亡率 12.8 以下を達成できなかったほか、その他の数値目標も一部の達成にとどまっており、引き続き、中長期的な自殺対策に取り組む必要がある。
第4章 第3次自殺対策計画の考え方
目指す姿
「県民の誰も自殺に追い込まれることのない愛媛県」の実現
計画の位置づけ
自殺対策基本法に基づく都道府県自殺対策計画
第3次計画の期間
令和7年度から令和11年度までの5年間
本県の自殺対策推進体制
県民一人ひとり、家庭、地域、学校、関係団体、民間団体、企業、市町、県がそれぞれ主体的な役割を担いつつ、連携・協働して自殺対策を総合的に推進。
第5章 本県における自殺対策の方針と施策
基本方針
(1)生きることの包括的な支援として推進
(2)関連施策と有機的な連携による総合的な対策の展開
(3)対応の段階に応じたレベルごとの対策の効果的な連動
(4)実践と啓発を両輪として推進
(5)関係者の役割の明確化と関係者による連携・協働の推進
(6)自殺者等の名誉及び生活の平穏に配慮(新規)
総括目標
令和8年までに、自殺死亡率を県総合計画の目標と同様の12.8 以下にすることを目指す。令和9年以降も更なる自殺死亡率の減少に取り組む。
基本施策
自殺リスクを持つ方が誰も取り残されないよう、幅広い世代、様々なリスク要因に対処する次の取組を強化。
(1)自殺対策に関わる関係機関との連携強化
市町の自殺対策推進に向けた支援、民間団体のノウハウを生かした対策の推進
(2)相談体制の充実・支援者のスキル向上
保健関係者等の自殺対策に関わる支援者の育成、相談体制整備・相談窓口の周知、切れ目のない相談体制の構築
(3)自殺予防の普及促進
自殺予防や精神疾患に関する正しい知識等の情報を周知
(4)地域の見守り・モニタリング体制の拡充
民生児童委員による見守り・声掛けの推進、インターネット上の自殺予告に対する迅速・適切な対応
重点施策
第2章の「対策を優先すべき対象群と課題」については、重要度が高い課題と捉え重点的に取り組む。
(1)こども・若者の自殺対策の推進
(ア)児童生徒への自殺予防等に関する正しい知識の普及啓発・教育
(イ)SOSの出し方・受け止め方に関するスキル向上
(ウ)いじめ・不登校等に関する相談体制の充実
(エ)児童生徒を守る連携体制
(2)現役世代の勤務問題及び経済・生活問題への支援強化
(ア) 長時間労働の削減等の適切な職場環境の普及促進
(イ) きめ細かい就職支援
(ウ) 事業主への経営等の支援
(エ) 経済・生活支援・消費者教育
(オ) ハラスメント防止対策の推進(新規)
(3)高年齢者の自殺防止に向けた包括的な支援の展開
(ア) 高年齢者の悩みへの相談支援の充実
(イ) 高年齢者の交流の場・居場所づくり
(4)あらゆる世代への心の健康づくりの推進
(ア) うつ病や精神疾患等に関する正しい知識の普及啓発
(イ) 適切な精神科医療の提供
(ウ) 依存症やひきこもりへの支援
(5)自殺未遂者の再度の自殺企図防止と遺された人への支援の充実
(ア) 地域が連携した自殺未遂者への継続的支援
(イ) 自死遺族・自助グループ等への支援
(6)女性の自殺対策を推進(新規)
(ア) コロナ禍で顕在化した課題を踏まえた女性支援(新規)
(イ) 妊産婦への支援の充実(新規)
(ウ) 困難な問題を抱える女性への支援(新規)
生きる支援につながる関連施策
様々な背景によって高まる自殺リスクは、生きることの阻害要因を排除し、促進要因を増やしていくことで低減を図ることが可能であり、「基本施策」や「重点施策」以外にも、性的マイノリティに対する理解の促進・相談支援や、犯罪被害者等の支援、難病医療の支援、大規模災害に備えた体制整備など、様々な関連施策に取り組むことによって、総合的な自殺対策を講じる。
お問い合わせ
愛媛県 保健福祉部 健康衛生局 健康増進課 精神保健係
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